当然のごとく、キラは最初から苦戦を強いられた。

当然だ、普段は仲間なだけに、キラの苦手な戦術は知り尽くされている。

それに加え、今は未熟なパイロット達ばかりをかばい、指示を与え、それと同時に自分にと向けられる攻撃を避けなければならない。

いくらキラが優秀でも、かなりきついものがある。

「あ〜、もう!」

現在、キラにはアスランとイザークが。

他のアカデミー生にはディアッカとニコル、そしてケイトたちの3機が対戦している。

まだ救いなのは息のぴったり合うことがないイザークとアスランがキラについたということだろうか。

二人も実力的にはキラに負けず劣らずなのだが、いかんせんチームワークがほとんどない。

だからキラも二人を相手にしながらなんとかアカデミー生たちの方に意識を向けることができる。

これがディアッカとイザークなんかが組まれたら、それこそもうキラのチームの敗北を認めるようなもの。

それを、彼らもわかっているはずなのだが。




「今考えても、しかたないよね」

『キラ、何をボーっとしている?落とすぞ?』

「え・・・、うゎっ!」

いつのまに前に回りこまれたのか、正面でデュエルに乗るイザークが今にも中を打ち込むという感じで構えていた。

間一髪でそれを避ければ、背後からイージスのアスランが迫ってくる。

「もう!本当に僕にどうしろって言うのさ!」

いらだった口調で叫んだ途端、キラの機体に警報が鳴り響く。

はっとそちらに向くと、アカデミー生の機体が1機、腕にペナント銃を受けていた。

実弾を使用するわけではないから、実際故障するなんてことはないが、機体の外面にはセンサーが取り付けられており、もし機体の腹部、コックピット付近に攻撃を受けたらその機体は壊れたものとし、緊急停止されてしまう。

そこの様子から見て、その引き金を引いたのはこの模擬戦闘の発案者であるディアッカ。






「本気なんだね・・・・・」

キラの中で、何かが・・・・・・・・ブツリと音を立てた。






『『キラ?』』

キラの呟きが通信機ごしに聞こえてきたのもつかの間、その通信はまるで拒否されるがごとく切られてしまった。

そしてキラの乗るストライクは今までとは格段に違う、すばやい動きでアスランとイザークを振り払った。

『なに!?』

『くそっ!』

あわてて後を追うが、猛スピードで駆けるキラに、アスランたちは付いていくだけでやっとだった。








『ディアッカ』

「なんだ?」

『彼女たち、いいんですか?放っておいても』

ニコルが言っているのは当然ケイトたちのこと。

宇宙空間に出たはいいが、はっきりいって何の役にもたたない。

確かに宇宙空間は彼女たちにとって不慣れな場所かもしれないが、だからといってただMSに乗ってぼうっとしていられたのでは邪魔になってしかたがない。

これでよく、パイロットになりたいなどといえたものだ。

「ほっとけよ。それより、そろそろ1機ずつ減らしてくぞ」

『了解』

ディアッカとニコルは緊張からか固まって行動しているアカデミー生の前後を囲った。

リーダー格であるキラはほとんどアスランとイザークに集中的に狙われて、こちらにまで指示を飛ばすことはできない。

先程1発だけ当てた機体に再び照準を合わせる。







『『『ディアッカ!』』』






「何事・・・・・・っ・・・・・・くぅ・・・・・」

アスラン達の声に振り返ったのもつかの間、ディアッカのバスターに強力な衝撃が走る。

すぐに体勢を立て直して自分が今までいた空間を見れば、そこにはストライクが・・・・



キラが、まるで敵を見下ろすかのように冷ややかな目でディアッカを見つめていた。

『ディアッカ』

「・・・キラ?」

『もう、手は抜かないから』

その人ことでを最後に、ブツリと音を立てて通信回線は遮断されてしまった。







こちらを呆然と見ているバスターを横目に、キラは一息吸うと固まったまま右往左往しているアカデミー生たちに怒鳴った。

「戦場でそんな固まっていてどうするの、敵はあちこちにいるんだよ!各機散開、周りを厳重注意!」

『は、はい!』

キラのいきなりの指示にようやく我に返ったのか、固まっていた場所からそれぞれ拡散する。

「1番から5番!敵のザクに照準、前後左右に回り込み、3機を落とせ!6番並びに7番は僕の援護を!」

『了解!』



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