アスラン・イザーク・ニコル・ディアッカサイド

 

今日はクルーゼ隊にとっては久しぶりの休日だ。

だからといっても、ここは地球。

自宅に帰ることもできなければ、特に知り合いがいるわけでもない。

ということで、アスラン達は大変暇をもてあましていた。

 

「やっぱり暇だよなぁ」

「休みは今日だけですからね。やつことも特別ないですし」

「そうだな。・・・キラはどうした?」

「そういえば、朝から姿を見ていないな」

彼らが今いるのはGパイロット専用の休憩室。

5人がいつもいるのはたいていこの部屋か自室、食堂、格納庫ぐらいなものだろう。

今日は休日だということもあって、Gがおいてある格納庫にも厳重な鍵がかけられている。

「キラを誘って街にでも行こうか。軍人だとバレなければ平気だろう」

キラのことに関しては抜け駆けは厳禁!ということになってしまっている現在、キラとどこかにでかけるときは事情が許す限り5人で行動している。

「名案ですね。そうしましょう」

決まるが早い、というべきか。

4人はさっそくキラがいるであろう、キラの自室へと足を向けた。

 

「キラ、いるかな」

「いいから呼び出せ」

アスランが部屋の扉をノックしようとしたそのとき。

いきなり部屋の扉が開いて、キラが飛び出してきた。

「うわっ」

「きゃっ」

よける余裕もなくぶつかってしまったキラとアスランだが、とっさにアスランはキラが怪我をしないように自分が下敷きとなった。

おかげで頭を床に叩きつける形になってしまったが。

「っっつ〜」

「ごめん、大丈夫アスラン?」

「あ、大丈夫・・・・・」

大丈夫と笑おうとしたアスランの表情が途中で固まった。

それはイザークとニコル、ディアッカにしても同様だった。

なぜなら、キラはいつも来ている赤服ではなく、淡い空色のロングスカートのワンピースに白のカーディガンを羽織った実に女の子らしいかわいいかっこうをしていたからだ。

例外はなく、4人はキラに見惚れていた。

「アスラン?」

「あ、ああ。なんだい?キラ」

はっとしてアスランはキラを見た。

「なにって、手を離して欲しいんだけど」

転んだ拍子に掴んだ手をそのまま掴んでいたらしく、キラはアスランの上に乗っているかっこうのままだった。

「あ、ごめん」

「ううん。アスランこそ怪我はない?」

「僕は大丈夫だよ。でもキラ、どこか行くの?」

「あ、そうだった!もうこんな時間!じゃ、みんな行ってくるね」

といって、キラは早々にヴェサリウスから出て街の方へ走っていってしまった。

それを呆然と見送る4人だったが・・・・。

「キラさん、誰かと待ち合わせでもしていたんでしょうか」

「だろうな、あんなに急いでいるということは」

「しかもあんなにかわいい格好をして」

これは・・・・

「あとをつけるしかない!」

本当に、こういうときだけは団結する4人であった。

 

 

 

私服に着替えた4人が街にでてキラを探すと、思いのほかあっさりと発見することができた。

だが、キラの横には待ち合わせの相手だろう、青年が立っていた。

肩より少しだけ長い金髪を一つにくくり、皮のジャケットにパンツという、シンプルだがとても似合っている格好をしていた。

そして、何より許せないのは・・・・。

キラとその青年が腕を組んで歩いているということ!

青年の顔は遠くてよく見えないが、キラは笑顔をたやさずに笑いかけながら何かを話している。

「くそ、誰なんだあれは」

「キラさん、地球に知り合いなんていたんですね」

「俺は聞いてないぞ」

「アスランが知らなくても、あれだけ親しそうなんだ。なにか関係があるんだろうな」

などと話している間に、キラたちは一軒の雑貨店に入っていった。

アスラン達もばれないように後をつけながら店内へと入る。

人が多くて見失いそうになりながらも、なんとかキラたちから目を離さずに進む。

キラがたどり着いたのは、何か石のアクセサリーを置いてある一角。

この雑貨店のメインらしく、そこには男女のカップルや友人同士で買い物に来ている女の子で群れている。

さすがにあそこに近づける男は彼女がいる者だけという感じだ。

人の波に飲まれるように、キラの姿も見えなくなってしまう。

でも、一緒にいる青年は周りの人間より身長が高めなため、いい目印になった。

4人は適当に辺りの商品を見回しながらも、キラ達の様子を凝視していた。

人並みからちらっと見て取れるキラは、なにやら手に取ったものを隣の青年に差し出してなにごとかを言っているようだ。

店内の音楽や話し声でその話している内容までは聞こえてこない。

 

しばらくすると、キラはいくつかの商品を手に取り、精算コーナーへと向かった。

だが、一緒にいる青年はそのまま外に出ようとしている。

「どこに行くんでしょうか」

「さあな。それよりキラのほうに行こう」

「でもあいつの正体、見極めたくねぇ?」

「そんなことをして、キラを見失ってもしかたないだろう」

ということで、アスラン達は店外に出てしまった青年はほっておいて、ひとまずキラの方につくことにした。

キラはといえば、購入したものを大切そうに胸に抱え、店の外へと出ようとしていた。

店の外に出ると、キラは周りをキョロキョロと見回した。

やはり、あの青年を探しているのだろうか。

だが、あの青年から目をそらしたアスラン達も、その姿を捉えることができなかった。

てっきり、店の外でキラのことを待っているのだと思っていたが。

「いませんねぇ」

「まったく、キラを待たせるなどとはいい度胸をしている」

「キラもあんな年上のどこがいいんだか」

「っていうより、あいつ本当にだれなんだ?」

ディアッカの問いに、3人はう〜ん、と考え込んでしまった。

が、そのとき・・・。


「ちょ、離してください!」


と悲鳴に近いキラの叫び声が聞こえてきた。

ばっと振り向くと、キラの周りには5,6人の男が囲んでいる。

そのうち一人はキラの腕を掴んでいた。

「いいじゃんか、ちょっとくらい付き合ってくれても」

「僕は人と一緒に来ているんです。あなた達と遊んでいる暇はありません!」

「でも今は一人じゃないか。どうせすっぽかされたんだろう?」

「そんなんじゃっ」

「現に、こうなっていても誰も来ないじゃないか」

「・・・・・・っ」

キラは掴まれている手を思い切り振り、解放されるとそのままの勢いで相手の男の頬を思い切り叩いた。

一応女でも軍人なわけで、その威力は普通の女性とはまったく比べ物にならない。

その隙に、男達の輪の中からはいでるようにして逃げ出す。

「この女〜!手加減してればいい気になりやがってっ」

と叫びながら、相手はキラを追いかけてくる。

いつものキラなら逃げられたのかもしれないが、今日はロングスカートをはいているため、足がスカートに絡まってうまく走れない。

4人は何を考えるでもなく、キラとその男の間に割り込み、向かってくる男達を蹴散らした。

「え?」

「キラ、大丈夫か?」

「平気ですか?」

「もう大丈夫だからな」

「ったく、キラを襲うなんて馬鹿なこと考えたな」

キラを背後にかばうようにして立った4人だったが、殴られた相手は黙ってそのままのびていてくれるわけではない。

憎悪の目でアスラン達を睨みつける。

見ると、相手の仲間らしい人物が何人かこちらにむかってくるのが分かる。

その数、15、16人ほど。

これは別にどうってことはない。

いつも訓練でやっていることだ。相手が自分より屈強な男達だからといって、べつにひるむこともない。

だが、相手の方にばかり気を向けていたため、背後にいたキラに近づいている男がいることに気づくのが遅くなった。

それは一番最初にキラが殴った、あの男だった。

「この女が〜っ」

「・・・・っや・・・っ!」

「キラ!」

もう少しで男にキラが殴られるというところで・・・・。

 

「ぐぁっ」

 

あの金髪の青年が、キラを抱きこんで相手を昏倒させた。

「あ・・・・」

「大丈夫か?」

「うん・・・・」

キラは青年の首に腕を回すとぎゅっとしがみついた。

そんなキラを抱き上げながら、青年は気を失ってしまった男を思い切り蹴飛ばした。

意識を取り戻した男はすぐ側に立つ青年を見るなり、恐怖で後ずさる。

「二度とここへは、そして私達の前へ現れるな。でないと、容赦はしない」

男達は蜘蛛の子を散らすような勢いで去っていった。

それに拍子抜けしたアスラン達はすぐにキラに近づく。



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