「好きだ・・・」

そう、俺が告白したら、キラも顔を赤くしながらも「僕も・・・」って答えてくれた。

正直、キラはアスランのことが好きだと思っていたから、告白しても振られると思っていた。

「アスランは大切な幼馴染だけど、恋とは違うもん」

そういってくれたキラが本当にかわいくて。

俺はますますキラのことが好きになった。

だから、俺はすごく幸せだったのに。

 

信じる心

 

最近、イザークとキラが妙に仲がいい。

いつも一緒にいるみたいだし、俺がキラを誘っても、

 

「ごめん、イザークと約束があるから」

「ええ?ディアッカこの後まだ任務があるって行ってたから、もうイザークを誘っちゃったよ」

「イザークから聞いたんだけど・・・」

 

イザーク、イザーク、イザーク、イザーク!!

最近のキラは二言目にはイザークだ。

今だって、キラはイザークと一緒にいるって話し出し、俺達付き合っているんじゃなかったのか?

そんなことを考えていても、一日に一度はキラの顔を見ないと落ち着かない俺って一体・・・。

まぁ、それだけ惚れてるんだろうけどさ。

そんなことを考えながら、ディアッカはキラとイザークがいるはずの待機室へと足を向けた。

近づいていくに連れて、イザークとキラの話し声がもれ聞こえてくる。

楽しそうだな・・・。

少々むっとしながら待機室へと入ろうとすると、

「好きだよ!」

という、キラの叫び声が聞こえてきた。

好き?

キラは誰に向かっていっているんだ?

俺は、ここにいるよな。

だったら、誰に?

「本当にそうなのか?」

「好きに決まっているじゃないか!そうじゃなきゃ、一緒にいたいなんて、望まないもん!」

ディアッカはそれを聞いて、目の前が暗くなっていくような気がした。

なるほど、そういうことね。

キラは、イザークのことが好きだったのか。俺には、同情していただけってことか。

ディアッカはキラに会うことなく、その場を立ち去った。

 

「ディアッカを好きなんて、当然のことなの!」

このキラのせりふを、聞くこともなく。

 








 

 

「どういうことなの!?」

キラがディアッカの部屋に入ってくるなり、そういった。

ディアッカは荷物をまとめている手を止めキラを見るが、すぐに視線を戻して作業を再開する。

「ディアッカ、どういうこと?艦を降りるって、なんで?」

「別に、関係ないんじゃない?」

「関係ないって・・・、なんで?アスラン達には教えていたのに、どうして僕には教えてくれなかったの?」

「ああ、悪い。話した気になっていた」

ディアッカはある程度の荷物を鞄に詰めると、着ている赤服を脱いで私服へと着替え始めた。

「ね、どうして降りるの?いつ戻ってくるの?」

「着替えられないから、手、離してくれるか?」

そういうと、振り払うようにしてキラの手を離した。

「ディア・・・カ、どうして?僕達、付き合ってるのに・・・・」

「そうだっけ?」

「そうだよ。ねぇ、なんで!?」

「うるさいな、んじゃ、別れればいいじゃないか」

 

「・・・・・・え?」

 

キラは、ディアッカの言葉の意味がうまく分からなかった。

その間も、ディアッカの手は止まることなく動かされ、荷物を全て整えると部屋を出て行こうとする。

「だってキラ、俺より好きなやついるんだろ?なのに俺の気持ちにつき合わせて悪かったな。もう解放してやるから」

「なん・・・・・で・・・・・?」

「じゃ、そういうことで」

キラの肩をポンと叩くと、ディアッカは振り返ることもせずに部屋を出て行った。

キラはそのままストンとその場に座り込んでしまった。

 

 














それから数日後、ディアッカは自宅のベッドに横になっていた。

今回の休暇の理由は、父親であるタッド・エルスマンからの呼び出しだった。

なんでも護衛が必要なのだが、他の人間は信用ならないという理由で軍人であるディアッカに護衛をさせる呼び戻したのだ。

普段の自分だったら、そんな呼び出しに応じることはなかったのに。

護衛の任務も、昨日で終わった。

なのに、ヴェサリウスには帰りたいとは思わなかった。

イザークが・・・、キラが、いるから。

だが、別れるときのキラの瞳が気になる。

自分が別れようといったとき、なぜあれほどキラは動揺していたんだ?自分がいなくなれば、堂々とイザークと付き合うことができるのに。

キラはやさしいから、罪悪感みたいなものがあったのかもしれないな。

別に、そんなもの感じる必要なんてないのにな。

最初から、自分の気持ちだけを押し付けていたのだから。

ふいに軽いノックがされると、部屋の中にタッドが入ってきた。

「ディアッカ、そろそろクルーゼ隊に戻らなければならないのではないか?」

「ん〜、まだいいんじゃない?というか俺、戻りたくないんだよね」

「何を弱気なことを。戦争が怖くなったか?」

「そうじゃない、軍人ではいたいんだよ。ただクルーゼ隊には、・・・・・ヴェサリウスには戻りたくないだけさ」

「何か、あったか?」

「ちょっとね。なぁ親父、俺を他の隊に移動させることなんかできないか?」

ディアッカは起き上がると、側にある椅子にどかっとすわった。

タッドもその向かいに腰を下ろす。

「何があったか、話せるか?」

「ん〜、手っ取り早く言っちまうと振られた?しかも、知っているやつに取られた」

「なるほど、それで顔を合わせずらい、というわけか」

「そういうこと。だから、戻りたくないんだよね。あの艦には」

「情けないことだな。で、本当に後悔しないのか?」

「後悔なら、もうとっくにしてるよ。あいつを好きだと気づいたときから」

「ならば、私のほうで手続きをとっておこう。もし気が変わったなら、そう言いに来なさい。所属隊が確定するまで、気ままな休暇を楽しむんだな」

そういうと、タッドは席を立って部屋を出て行こうとする。

「そうだ。クルーゼ隊、今プラントに戻ってきているらしいぞ」

「え?」

タッドはそれだけいうと、すぐに部屋を出て行った。

「キラが、戻ってきている・・・」

近くにいると知れば、無性に会いたくなるし、愛しいと思う。

キラに振られたのに、まだあの姿を目にしたくなる。

自分がこれ以上傷つかないように、キラをこれ以上傷つけないように、自分から言い出した別れなのに。

妙なあとくされがないように、キラの前から姿を消したというのに。

 

 

次の日、ディアッカはまた同じように部屋のベッドに横になっていた。

何をするでもなく、ただ天井を眺めていた。

「ディアッカさま、よろしいでしょうか?」

「なに?」

ドアの向こうから、執事が遠慮しながら声をかけてくる。

「イザーク・ジュールさまが、お見えなのですが」

「いないって言っといて」

「ですが・・・・」

そこでバタンッと大きな音を立てて扉が開かれた。

驚いてそっちを見てみると、そこには明らかに機嫌が悪そうなイザークが立っていた。

「俺を相手に居留守とはいい度胸しているな、ディアッカ」

「おまえね、礼儀ってものを知らないのか?勝手に人の部屋に入ってくるなよ」

執事に下がっていいと合図すると、ディアッカは起き上がって椅子に腰を下ろした。

イザークはそんなディアッカを立ったまま見下すように睨みつける。

「なんか用なわけ?」

「きさま、なぜヴェサリウスへ戻ってこない。タッド氏から、俺達が戻ってきているということは聞いているのだろう?」

「ああ、昨日聞いたかな。でも、別に俺が戻らなくても問題ないでしょ」

「確かに、お前一人ぐらいいなくても問題はない。が、それで悲しむ奴がいるのでな」

「へぇ、誰だよ、それ」

 

「・・・・・・キラだ」

 

イザークの言葉に、ディアッカの表情が固まる。

なぜ、キラは俺がいなくなって悲しむんだ?

だって、あいつはイザークのことが好きで、俺のことなんかなんとも思ってないはずなのに。

「嘘付けよ、なんでキラが悲しむんだ?」

「貴様、キラの彼氏なのだろう?だったら・・・・」

「あいにく、俺はあいつとはもう別れてるよ」

知っているくせに、しらじらしい。

俺がキラと別れたから、キラと付き合っているくせに、どうせ。

なのに、なぜ戻ってこないか?

俺に戻ってきて、付き合っているお前らを見続けろとでも言うのか?

「なぜ、キラと別れたんだ?」

「そんなの、お前が一番よく知っているんじゃないか?」

「理由は想像つくが、あいにく言葉をちゃんと聞くまで確信が取れないんでな」

「キラには、別に好きな奴がいるからだよ」

つまり、お前な。

「その相手、俺というなら、勘違いもいいところだぞ」

「・・・・っ、なんでだよ!俺はキラの口から聞いてるんだよ、好きだって!」

「それ、俺の名前を出していたのか?」

「それは・・・・」

名前は言っていなかったけど、でも、イザークに言っていたことは確かだ。

イザークはそこまで聞くと、ふ〜と深いため息をついて、部屋を出て行こうとした。

「お前がまだキラのことを大切に思っているなら、一時間後、近くの自然公園まで来い。そこに現れなかったら、キラは俺が貰い受ける」

それだけ言うと、バタンッと大きな音を立てて、再び扉を閉めて出て行ってしまった。

なんだっていうんだよ。

一時間後、近くの自然公園。

何があるっていうんだ?

しかもキラを貰い受ける?

もうとっくに、キラはお前のものじゃないか。




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