キラSide

ついてないなぁ。

ザフトの動きが静か過ぎるような気がして、様子を見るために外に出た。

整備中で動かすことができなかったストライクのかわりに、フラガのスカイグラスパー2号機を借りてきたはいいけれど・・・。

上空の反応源を調べようと上昇したのが悪かったのか、そこにいたのはザフト軍の輸送機。

相手が攻撃してきたので思わず反撃を打ってしまったのだが、相手の機体は大丈夫だっただろうか。

キラ自身といえば、その攻撃を翼に受けてしまってこれ以上は飛ぶことができなくなっている。

通信機も使えないようだし、レーダーにアークエンジェルの反応はない。

 

困ったなぁ・・・。

 

完全に孤立して閉まっている。おそらくは後からフラガ少佐が探しに来てくれるだろうが、その後しっかりと怒られるのだろう。

「無人島・・・だよね」

落ちる瞬間見ただけだが、ここはとても小さな小島だった。

非常用の鞄を肩にかけ、期待から離れようとしたときふと銃が目に留まった。

どこで何があるかわからないから、必ず持っているようにと手渡されたもの。

 

人を傷つけるものだからもっていたくはない。

でも、もしもということもあるのだ。

キラはスーツのポケットに銃を差し込むと、森の中へと入っていった。

無人島だから人がいないことは想像していたが、ここにはまったく生き物の姿を見ることができない。

鳥も、動物も。

「静かなところだな」

何もないけれど、平和がある。

荒々しい戦争の中に身をおいているからこそ、感じることができる平和の暖かさ。

 

ガサガサ  ガサガサ

 

「え?」

誰もいないはずなのに、何か音が聞こえてくる。

おそらくは前方の浜辺からだろうか。

キラが着水したところからするとちょうど反対側の岸辺。

一体、誰がいるのだろうか。

 

「!?」

 

驚きに、声を出すこともできなった。

だって、そこにいたのは紅いパイロットスーツを身に着けた少年と何度も交戦したことがあるモビルスーツ・デュエルだったのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

イザークSide

ついてない・・・。

本部からの出立がただでさえ遅れたというのに、連合軍機との接触でこんな無人島に足止めを食ってしまった。

無事着陸できたとはいえ、磁場の影響からか通信機を使うこともままならない。

最悪だ・・・。

おそらくはディアッカ辺りが探しにくるだろうから、それを待つしかないだろう。

「・・・なんだ?」

後ろから視線を感じるような気がして、イザークは振り返った。

「あ・・・」

「貴様っ、地球軍のものか!」

相手が着ているパイロットスーツを見て、すぐに連合のものだと悟ったイザークは手持ちの銃を相手に向ける。

が、発砲をする前に相手から放たれた弾によって銃は跳ね除けられてしまった。

「ぐっ・・・・」

イザークがひるんだ隙に、相手は逃げていってしまう。

逃がすかっ。

イザークはその後を追いかける。

後を見失わないように追いかけると、途中広い空き地のような場所に出た。

相手はその中心でキョロキョロと辺りを見回している。

その手には、まだしっかりと先ほどの銃があった。

チャンスは今しかない。

相手がこちらに完全に背を向けた隙に、イザークはナイフを片手に駆け出した。

すぐにこちらに気づいて銃を構えようとするが、その前にその銃を蹴り飛ばしその勢いで相手の体をなぎ倒した。

押さえつけ、ナイフを振り下ろそうとした瞬間・・・・・

 

「い、いやぁぁぁぁぁああああああ」

 

 

 

 

 

 

 

二人Side

「あ・・・あ・・・・・」

目の前に突きつけられるナイフに、キラの体は振るえ、恐怖のあまり声を満足に出すこともできなかった。

だがあっけにとられたのはイザークも同じ。

胸倉を押さえ込んでいる腕に伝わる感触と、先ほどの男の物とは思えない悲鳴。

「お前、女か?」

キラはがくがくと振るえながらも、ゆっくりとうなづいた。

「驚いたな、地球軍は女をモビルアーマーに乗せるのか」

イザークはナイフをキラののど元に突きつけたまま、つかんでいた手を離した。

「ぼ、僕は地球軍じゃ・・・」

「だったらなんだというんだ?対岸にあった戦闘機は貴様のものだろう?」

見られていた・・・っ。

確かにこの小さな島では磁場の影響があるとはいえ、レーダーに反応してしまったのだろう。

このままでは、殺されるかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イザークSide

イザークはキラの両手を一つに縛り上げると、近くの木にくくりつけた。

いくら軍人かもしれないとはいえ、女性に乱暴をする気はイザークにはなかった。

だが、このまま無防備に解放してまた攻撃をしかけられてもつまらない。

先ほどの銃は奪い使えないように海中へと投げ捨ててはおいたが、外の場所に武器を隠し持っている可能性も十分にありえる。

デュエルのコックピットに座りながら、イザークは通信機の回復を待つ。

が、やはり先ほどと変化は見られないようだ。

こちらから連絡をするのは、あきらめなければならない・・・か。

と、そのときなにやら下から物音が聞こえる。

まさかと思い下を見下ろせば、案の定、あの地球軍の女が縄を抜け出し走り去るところだった。

「待て!」

こちらが気づいたことを悟ったのか、なおのことスピードを上げる。

地上に足をつけたころには、もう相手の姿は見えなくなってしまっていた。

「くそっ」

 

 

 

 

 

 

 

キラSide

あのザフトの兵士はキラを縛り上げるとそのままデュエルのコックピットへと向かってしまった。

逃げるチャンスは、いましかない。

そう思ったキラは硬く結ばれている手の縄をどうにかして解こうと、見つからないように動く。

確か、縄抜けにはこつがあるってフラガ少佐に教えてもらった。そのとおりに腕を手首を動かす。

・・・・・取れたっ。

イザークがこちらに気づいた様子はまだない。

そっと立ち上がり、あとづさる。

よし。

キラは遠くに逃げるように思い切り走った。

「待て!」

こちらの足音気づいて静止の声をかけられたが、それに従っていては今度は命が危ない。

キラはそのまま茂みの中へと隠れた。

そのまま、どのくらいじっとしていただろう。

この小さい島では、むやみに動き回ってしまっては帰って見つかる可能性がある。

そう考えたキラは、一番茂みの深そうなところに身を潜めた。

もう、どのくらい隠れているのか間隔さえなくなってきた。

すっかり日が暮れてしまったから、軽く3,4時間はたっていることは確かだが。

「寒い・・・・」

さっきつかまったせいで、荷物は全部あの兵士に取られてしまった。

火をおこそうにも道具がないし、煙か何かで見つかってしまう可能性だってある。

怖い・・・。

キラは自分の体を抱きこむように、ひざを抱えた。




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