今日はSEED学園の学園祭。

2日目の今日は学年関係なしの一斉イベントの日だ。

そして、昼も過ぎた2時。

今日のメインイベントの開催を、みんな今か今かと待ちわびていた。

 

「ねぇラクス。本当にやるの?」

「あたりまえですわキラ。ここまで来て何を言っているんです?」

「だってさぁ、絶対僕よりラクスが織姫やったほうがいいって」

「何をおっしゃいます。この学園に、キラより織姫にふさわしい者などいるわけがありませんわ」

そういってラクスはキラの髪を結ってくれている。

キラが今来ているのは、まさにおとぎ話に出てくるような着物。

実は、今日のメインイベントとは、総称して「織姫争奪戦!誰が織姫のハートをゲットできるか!」というものだ。

各クラス代表一名のどの彦星が、見事織姫の所まで最初にたどりつけるかという至極分かりやすいゲーム。

だが、レースは学園全ての敷地を使うため、本格的な仕掛けがあちこちにある。

簡単に説明すると、スタートは学園中央にある中央広場。その後、東の1学年校舎、南の2学年校舎、北の3学年校舎、西の特別校舎の順に回り、最後にまたこの中央広場に戻ってきてゴールイン。

優勝クラスには、ラウ・ル・クルーゼ理事長から直々に期末テストの免除が、優勝者には織姫役のキラからキスのプレゼントがある。

だからこそ、各クラスから我こそは!というつわものが参加をしているというわけだ。

「さぁできましたわ」

ラクスはキラを鏡の前に立たせる。

そこには、今まで見たこともないような自分が立っていた。

「・・・・・・」

「なんてかわいいんでしょう。この世のものとも思えませんわ。ね、キラ?」

「・・・・僕じゃない・・・・」

「あら、間違いなくキラですわよ。いつもよりちょっとおしゃれをした・・ね」

いつもは肩までしかない髪が、今はウィッグをつけているので地に届きそうなほど長い。

顔にも化粧が施されている。

これを全て整えたのはラクス。自分が使っているステージ衣装、道具などをフルに使ってキラを織姫へと変身させたのだ。

「さぁキラ。みんなが待っていますわよ。会場へと急ぎましょう」

「うん・・・」

こんな自分をみたら、みんななんていうか。

ラクスはかわいいっていうけど、キラは自分ではない人物のようでなぜか嫌だった。










 

会場となっている中央広場にはすでに多くの人が集まっていた。

キラが足を踏み入れた途端、それに気づいた者たちによって一気にざわめきに変わる。

「ラクス、やっぱり変なんだよ・・・・。みんな見てるもん」

「キラがあまりにかわいらしいからですわ。大丈夫ですよ」

「そうかなぁ」

会場が設置されているところに行くと、もうすでに出場者が全員集まっているようだった。

その中には知った顔がいくつかあった。

「え、イザークやアスラン達もこれに参加しているの?」

「あら、キラ知りませんでしたの?アスランやイザーク様、ニコル様にディアッカ様。あとラスティ様とミゲル様もご参加になっていますわよ」

キラが見たのは各クラスの自慢の手作りである彦星の衣装に身を包んだイザークたちだ。

さすがに手作りなだけあって、綺麗な色使いとシンプルな装いがそれぞれの印象にあっている。

「あ、キラ」

アスランが気づいて呼ぶと、いっせいに周りにいたイザークたちも振り返る。

そして、何も言わずに固まってしまった。

「・・・・・やっぱり変なんだ・・・。・・・着替える」

「そんなことは許しませんよ。アスラン、キラには似合っていませんか?この姿」

ラクスに問いかけられると、アスランは首が飛んでしまうかと思うぐらいに激しく横に振った。

「よく似合ってるよキラ!」

「そうですとも、お似合いです!」

「お前以上に似合うやつなんかいない!」

「そ・・・そう?ありがとう」

あまりの勢いに、思わず引いてしまうキラ。

そこへ役員の後輩がキラをステージまで呼びに来た。どうやら時間が来たらしい。

「じゃぁ、がんばってねみんな。無理、しないでね」

「ああ。お前も、ゆっくりみているといい。俺の活躍をな」

イザークのせりふにキラはにっこり笑うと、ラクスに手を引かれてステージへと上がった。




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