ふわふわとゆれている。 体はだるいのに、なぜか気持ちいい。 ずっと、このままでいたいような気がする。
ふと目覚めたとき、イザークは見慣れた自室のベッドに横になっていた。 だるい体を起こすと、額に乗っていたタオルが落ちる。 誰かがいたような気がしたんだが・・・・。 気のせいか? パタン、ともう一度横になる。 たった数分おきていただけだというのに、息が上がる。 熱があるのか、頭がふらふらしている。 コーディネータは病気にはかかりにくいが、いざ病気にかかってしまうと免疫力がないために、ひどく重病になってしまう。 「イザーク、起きているのか?」 扉から入ってきたのは、アスランだった。 「アス・・ラン?」 「って、倒れたくせに何でちゃんと寝てないの」 すぐに側にかけよってきて、イザークが跳ね除けていたシーツを駆けなおす。 落とされていたタオルを拾い上げ、冷たい水で洗うともう一度額の上に乗せてくれる。 冷たくて、気持ちいい。 「アス・・・ラ・・・」 「ん?」 「なんで、俺・・・。どうして、お前が・・・」 「イザ、倒れたんだよ。びっくりして医務室連れて行こうとしたら、嫌だって泣き出すし。それで、この部屋に連れてきたんだ。気分はどう?」 「体がだるい」 「熱があるんだから、当然でしょ」 ベッドに腰掛けると、イザークの顔を覗き込んだ。 先ほどより大分顔に血の気が戻ってきたようだ。 倒れたときは、本当にびっくりするほど青白い顔をしていたから。 「あ、今日のイザークの仕事は全部片付いたからね。報告書は提出してあるし、デュエルは俺が整備しておいた」 おそらく、イザークの性格上仕事のことが気にかかっていると絶対に素直に休むとは言わないだろう。 だから、アスランは一足先に終わった自分の仕事の後にイザークの仕事もまとめて片付けてしまったのだ。 「そうだ、ついでに今日の作戦会議は延長されたから」 「延長?」 「クルーゼ隊長が急な外出でね」 嘘だ。 クルーゼ隊長はいまだに艦の中にいる。 作戦会議はイザークの急病を理由に延期された。みなイザークを心配するあまり、会議どころではなくなってしまったのだ。 でも、そのことはイザークには教えない。 アスランはイザークの髪に手を伸ばすと、そっと梳いた。 気持ちよさそうに、イザークは目を閉じる。 しばらくそうしてやっていると、どうやらイザークが眠ってしまったようなので、アスランはそっとベッドを離れようとしたが・・・。 「どこ行く?」 とイザークがいった。驚いたアスランが振り返ると、イザークは目を薄く開いていた。 「寝たんじゃなかったの?」 「どこ行く?」 アスランのというにはまるで答えず、イザークはアスランを見上げたまま繰り返した。 「部屋に戻ろうと思って。人がいると、イザ眠れないだろう?」 「ここにいろ」 「いいの?」 「ここにいろ」 イザークの独り言のような言葉に苦笑しながら、アスランは再びベッドに腰掛けた。 そんなアスランにイザークは擦り寄る。 「イザーク、何かして欲しいことは?」 「・・・・・・」 「え?」 あまりの小さな声にアスランは聞き取れなかった。 「なに?」 「・・・・・キス」 「キス?・・・・・していいの?」 コクリとうなづくイザークの顔は耳まで真っ赤に染まっている。 そんなイザークを微笑ましく思い、アスランはイザークの唇に、触れるだけのキスを落とした。 すぐに離れてしまったアスランをイザークは不服そうに見上げる。 「これ以上は駄目だよ。イザ、熱上がっちゃうから」 深いものをすれば、それだけ我慢できなくなるに決まっている。 もちろん、自分が。 ただでさえしんどそうなイザークに無理をさせることはできることならしたくはない。 「ほら、もう眠りなよ。ちゃんとここにいてあげるからさ」 「嘘だったら、絶交だからな」 「はいはい。おやすみ、イザ」 「おやすみ、アスラン」 目を瞑ったイザークはすぐに睡魔が襲ってきたらしく、かすかな寝息が聞こえてくる。 「まさか、イザークからキスをせがまれるなんてね」 いつもは、自分がキスをしていいかと尋ねているのに。 イザークからのキスはもちろんないし、キスをしてくれと頼まれたのも今回が初めて。 熱が出ているせいで、もしかしたら普段よりプライドという壁が崩れているからかもしれない。 おかげで、自分の欲望を抑えるのに、アスランは苦労した。 もしもう一度などといわれたら、自分を抑えられたかどうか。 「今度は、元気な時に言ってね、イザーク」 そうつぶやくと、アスランは一人微笑んだ。
〜あとがき〜 風邪のアスイザ版です。 感想、よろしくお願いします。 |