「んん・・・」 「キラ、起きた?」 「・・・・アスラン?」 「おはよう」 「ん〜、おはよ〜・・・・」 寝ぼけているのか、アスランのキスをくすぐったそうに受け入れている。 「そろそろ部屋に戻らないと、怪しまれない?」 アスランの言葉に、キラははっとして体を起こした。 「いけない、監視カメラそのままだった」 「それなら僕が細工しておいたよ。いくらなんでも、ずっと同じじゃおかしいからね。だからバレてもいないだろうし、キラがこの部屋に来ていることも知られていないはずだよ」 「そっか、ありがとうアスラン」 「それより、キラ・・・。今日の夜も、また来てくれないかい?」 「今日・・・も?」 「うん、話したいことがあるんだ。とっても大事な話」 夜にくるとなると、もう一度監視カメラを操作しなくてはならなくなる。 2日連続ではさすがに気づかれてしまうのではないかと思ったが、アスランの顔が今まで見たこともないほど真剣だったので、キラは思わずうなづいてしまった。 「ありがとう。それじゃ、今はもう部屋に戻ったほうがいいね。朝食を運んでくれるのもキラ?」 「あ、うん。アスランの世話は僕が任されているし」 「それじゃ、そのときに」 キラの髪にそっと口付けると、そのままキラを見送った。 「もう少しだから、キラ・・・・」 そのつぶやきが、キラに届くことはなかった。
その日もまた、何もなかった。 ザフト軍はあいかわらず攻めてくる気配さえみせない。 レーダーも感知していない。 その日にあったことといえば、アスランの様子を見るために艦長とフラガ、バジルール少尉が監視部屋に来たぐらい。 その時もキラは同行を命じられ、そのまま見張りという意味でアスランの部屋にとどまった。 消灯時間も近づいてきたということで、キラは一度部屋に戻り、昨日と同じように監視カメラの映像を操作した。 昨日と同じではさすがにばれてしまうだろうということで、少しだけ映像を変えて。
「アスラン、入るよ?」 中に入ると、そこにはザフト軍の制服をきっちりと着込んでいるアスランの姿があった。 制服は今日の昼間、フラガがアスランに返したものだ。 なぜなら、彼が地球軍の服を着ることを拒否したため。 これはザフト軍人ならばあたりまえなのだが、着るものがない以上、着ていたものを返すしかない。 アスランによく似合っている、ダークレッドの制服。 ザフト軍の中でもこの制服を着ることができるのはエリート軍人であり、戦闘に優れている者の証でもあるということを、以前フラガから聞いたことがある。 キラは思わずアスランの姿に見惚れてしまった。 「キラ、どうしたの?」 入り口で立ち尽くしているキラに、アスランは首をかしげる。 はっとしたキラはなんでもないと首を振って部屋の中に入った。 もちろん、誰かが入ってこないように鍵をかけて。 アスランはキラを手招きすると、ベッドにそろって腰掛けた。 「キラ、聞いて欲しいことがあるんだ」 「その前に、僕から話しちゃだめかな」 「・・・・いいよ。何?」 「ぼく・・・、ザフトに行ってもいい?」 「!?来てくれるのか?」 「だって・・・・」 みるみるうちにキラの目に涙が溜まってくる。 一筋、二筋とキラの頬を流れ落ちる。 「もう、君の側にいれないのは・・・・、離れるのはいやなんだっ」 「キラ・・・」 ポロポロと涙を流すキラを、アスランはそっと抱きしめた。 「勝手だってことはわかってる。いままで、さんざんザフトを、コーディネータを傷つけてきたこともわかってる。でも、償いでも、なんでもするから・・・、だからっ」 「大丈夫だよ、キラ。君は何も考えずに一緒にいてくれればそれでいいんだ。キラのことは、俺が守って見せるから」 アスランのせりふに何度もうなづく。 キラの顔をそっと上に向かせると、涙を流しているアメジストの瞳にそっと口付ける。 そのまま頬を流れている涙をぬぐい、唇へとキスを落とす。 「んん・・・・・っ」 キラにとっては初めての深いキス。 昔、何度もしたことがある、触れるだけの他愛もないキスではなくて。恋人同士がするような特別なキス。 「・・・・・はっ、あ・・・・」 角度を変えて何度も口付けると、飲み込めない唾液がキラのあごへと伝う。 ようやくちびるが離れたときには、すでにキラの体から力が抜けてアスランに体重を預けるような形になっていた。 「次は俺の話し、いいかな?」 「あ、うん。何?」 「今夜0時、この艦はザフトの手に落ちるよ」 キラはいきなり言われたことの意味が分からなかった。 ザフトの手に落ちる? それは、ザフトが攻撃を仕掛けてくるということだろうか。 キラの体が小刻みに震えてくる。 また、戦わなければならないのか。 あの機体に乗って、ストライクに乗って・・・・。 「嫌・・・・・、も・・・・、戦いたくなんか、ない」 「大丈夫、キラは戦わなくたっていいんだから」 「どういう、こと?」 「キラは僕の側にいればいいってことだよ」 |