いつものように部屋でのんびりとすごしていたイザークたちだった。
『総員、第一戦闘配備。ザフト軍接近中、各自持ち場に着け。なお、Gパイロットは格納庫集合』
そんなサイレンが繰り返されれば、自然イザークの顔がこわばる。 自分がここに来てから、もう何度かオルガたちがこうして呼び出されることがある。 そのたびに、イザークは一人この部屋に残される。 爆音と、振動が続く、戦闘中。 ただ、オルガ達の無事だけを祈って・・・。
「行くのか・・・・?」 「ま、敵がいるんだからしかたないんじゃないの?」 「相手なんてたいしたことないんだし、すぐ終わるよ」 「・・・・・心配いらない、イザークはここにいて」 そういって各々イザークに声を掛けてから部屋を出ている。 この瞬間が、嫌だ。 3人が戦闘に出て行って、自分ひとりが残されて。 心細くて、心配で胸が張り裂けそうで・・・・。 どうして、戦争なんてあるんだろう。 どうして、同じ人間が争うんだろう。
「大丈夫・・・、また、ちゃんと帰ってきてくれる・・・」 ただいまって、言って・・・。 3人とも無事で、きっと帰ってきてくれる・・・。 そう信じているから・・・。
一時間も、たっただろうか・・・・。 外の爆音や振動はすっかりやんでいる。 戦闘は終わったはずだ。 なのに、オルガたちは戻ってこない。 いつもは真っ先にこの部屋に帰ってきて、イザークのことを安心させてくれるのに・・・。
もしかしたら、何かあったんじゃ・・・。
どうにかして確かめようにも、この部屋から出る手段を持たないイザークにはそれすらも叶わない。 だから、ただ祈るしかなかった。 3人が無事なことを・・・ただ・・・・。
シュン・・・・っ
音を立てて開いた扉を、イザークははっと見た。 オルガたちが帰ってきた! そう思ったから・・・。
でも、そこに立っていたのは赤いパイロットスーツを身に着けた蒼い髪の少年が一人、肩で息をしながら立っていた。 「イザーク!」 自分を見てそういうと、少年はあっというまに近づいてきてイザークを抱きしめた。 「イザーク、無事でよかった・・・・。本当に」 そういって痛いほど抱きしめられているが、イザークにはこの少年が誰なのかがまったくわからなかった。 だが、彼は自分の名前を知っている。 それに、抱き込まれた腕の感触を自分はなぜか知っているような気がした。 相手の胸を軽く押して顔を見上げても、やはり覚えていない。 「イザーク?」 「・・・・・おまえ、誰?」 「え・・・・・」 相手の目が驚いたように見開かれる。 途端腕が緩んだ隙に、自分でも驚くようなすばやさで腕の中から出て距離をとる。 相手をよく見てみると、その少年が着ているのは確かにザフト軍のパイロットスーツ。 ザフトが、なぜこの船にいる? 敵対しているはずなのに・・・・。 「なぜ、お前みたいなザフトがここにいる!?」 「な・・・・・っ、イザーク?」 「気安く名前を呼ぶな!何でお前が・・・っ、オルガは、シャニやクロトは・・・っ!」 「誰?そいつら・・」 ゆっくり近づいてくるのに、イザークも一歩ずつ後ろに下がる。 が、やはり個室なので限界がある。 イザークが壁にぶつかっても、相手はゆっくりと近づいてくる。
なんで、3人は戻ってこなくて・・、こんな奴が・・・。 どうして、なんで? 嫌だ・・・・嫌・・・・・・。
ドクン
そのとき、急に胸が苦しくなってきた。 まずい・・・、薬が切れたんだ・・。 胸をぎゅっと掴んだまま、イザークは壁にもたれてずるずるとしゃがみこむ。 「!イザーク!?」 「・・・・さわ・・・るな・・・・・」 そう口では言っていても、胸が苦しすぎてまともに体を動かすことができない・・・。 最近は定期的に薬を飲むことで発作を起こすこともなかったのに、今日は戦闘が入ったせいで薬を飲むのを忘れていたから・・。 「ふ・・・・・うぅ・・・・・・・」 「イザーク!」
遠いところからの声のように、聞こえた。 その声を聞いたが最後、イザークは意識を手放した。
やさしい、暖かな腕に包まれているような気がした・・・・。 |