フラガが格納庫へ入ると、ほとんどの整備士はストライクの周りに集まっていた。 そのコックピットにはニコルとキラの姿がある。 「キラ、準備できたか?」 「ムウさん」 キラは最後の仕上げとばかりにプログラムの最終チェックをかける。 訓練もなしにいきなりこれに乗るのはいくらフラガでも無理があるとキラは思う。 でも、今そんなことを言っている暇はない。
彼を、信じるしかなかった。
「最終チェック、終わりました」 「おう、助かる。無理言ってすまなかったな」 ポンポンと頭を撫でるフラガを、キラは不安そうに見上げた。 その表情は、今にも泣き出しそうで・・・・。 「どうした?ん?」 「・・・・っ」 キラはフラガの胸に飛び込むとぎゅっとしがみついた。 「おっと」 いきなりで驚いたフラガだったが、そんなキラをみてゆっくりと抱きしめた。 「大丈夫だ。俺たちは大丈夫だから」 「わかって・・・・・わかってる。けど・・・」
不安で、不安で、しょうがなかった。 大切な人が、戦って。その原因を作っているのはほかならぬ自分で。 不安で、怖くて、胸が押しつぶされそうだ。 それでも、無力な自分はただ祈るしかできなくて。
「大丈夫、必ず帰ってくるって。な?」 「・・・・うん。信じてるからね」 「ああ、まかせとけ」 ゆっくりと腕を話すと、フラガはキラに微笑んでからストライクのコックピットへと体を沈めた。 キラも一緒に移動して、ストライクの起動をさせ異常が起きないか最後まで入念なチェックを繰り返す。 「よし、OKだ。キラはここまで。ブリッチで俺の活躍見てろよ」 「ムウさん・・・」 キラは最後に身を乗り出すと、フラガの頬に軽く口付けた。 いきなりのことにキョトン、と目を見張ったフラガに、キラはかすかに頬を染めながら言う。 「必ず無事で帰るおまじないって聞いたから・・・」 一体、誰にそんなことを教わったのか。答えは簡単だった。 「さんきゅ。だけどこれ、それを言った奴にしかやらない方がいいぞ?俺は例外だとしてもな」 「?うん、わかった」 「さぁ、キラ」 「うん」 キラはストライクを離れると、近くの控え室へと移動した。 ここならば、最後までフラガを見送ることができる。
「ムウ・ラ・フラガ、ストライク、出るぞ!」 『ストライク発進、どうぞ!』
「必ず・・・・無事で」
「ストライクが出ただと!?」 「パイロットは一体誰なわけ?」 「あれは、キラにしか起動できないはずじゃ・・・」 ストライクが出る、という情報しか与えられていないアスランたちは戦闘の最中にもかかわらず最悪の答えが頭をよぎった。 つまり、ストライクに乗って出るのはキラではないかということだ。 キラはプログラミングはそれこそ人を寄せ付けないものがあるが、それでも軍人ではない。 軍事訓練を受けているわけでも、ましてパイロットの経験があるわけでもない。
そんなキラが、どうして・・
そうこう考えているうちに、ヴェサリウスからはストライクが出てきた。 それは、まごうことなくストライクに間違いは無く。 敵の攻撃が新しい敵と判断されたストライクへ向けられる。
「「「しまった!」」」
パイロットが誰なのかということばかりに気を取られて、敵の存在を一瞬忘れていた。 攻撃を撃破しようとするが、それも届かず。
「「「キラぁ!!」」」
・・・・・・・・・・・・・・っ!!
激しい爆音が、辺りに鳴り響く。 爆煙がはれたその場所に残ったのは、一機のGANDAM。
ストライク、だった。
「キラ、無事なのか!」 「返事をしろ、キラ!」
「残念だが、お前らの考えははずれだ」
聞こえてきた声に、アスランたちは目を見張った。 「「「フラガ副隊長!?」」」 「おう」 アスランたちの驚きの表情に、フラガは苦笑する。 まったく、自分の実力を一体なんだと思っているのだろうか。 これでも「不可能を可能にする男」と自負しているのだが。 「さぁ、さっさと片付けてプラントへと急ごうか!」
「「「おう!」」」
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