あれから数日。

結局プラントに情報を漏らしたのは誰なのか、地球軍上層部は突き止めることができずにいるようだ。

あれからキラも何度か同じような尋問を受けることがあったのだが、結局はなんの証拠も出てくることはなく、事実は闇から闇へと葬られる結果となった。

そんな、ある日。

「キラ、悪い」

「はい?」

いつもどおりキラの部屋にいりびたっていたフラガが急にキラに向かって謝ってきた。

いきなりのことなので、キラも何のことを言っているのかさっぱりわからない。

「どうしたんですか?大尉」

「実は今日ちょっと用事ができて、街まで行かなきゃならなくなった」

「なんだ、そんなことですか。それで、どうして僕に謝るんですか?」

「一応、俺はキラのボディーガードと監視役を兼ねているからな、俺が居ないとキラが移動できないんだわ」

そういえば、今はもう時間的に言えば何気ない散歩に出ている時間だろうか。

フラガがキラに付くようになってから、キラは自由に行動できる範囲が広くなった。

あくまでフラガが付き添っていればの話だが。最近フラガが側に居ないことの方がめずらしいため、彼が自分の監視役だということもすっかり忘れていた。

「わかりました。今日は部屋にいますから、行ってきて下さい」

「悪いな」

「いいえ。あ、そうだ。できたら僕、フラガ大尉の部屋に居ちゃダメですか?」

「俺の部屋?」

「そろそろ、部屋の掃除が必要な時期じゃないですか?」

最近はどちらかといえばキラの部屋の方に居ることが多く、フラガの部屋の中を覗いてはいない。

フラガの部屋に居るときは目に付いたところをキラが適当に掃除をしているのだが、いかんせん、彼だけではまったく掃除をしようとはせず、部屋の環境にも無頓着だ。

以前、あまりにもあきれたキラが少しは自分で!と説得したが、結局は3日と持たなかった。

「別に、大丈夫じゃないか?」

「ホントですか?」

疑わしそうなキラの視線を、フラガは明後日の方向を見てごまかしている。

やはり、掃除は必要なようだ。

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、こんなものかな」

辺りを見回しながら、満足げにうなづいた。

やはり部屋の中を覗けばある程度は整っているように見えるものの、隅々を見れば急いで片付けたのが丸分かりの物のしまい方。

定期的に覗きに来るものだと、キラは何気なく心に決めた。

「あとは・・・・」

周りを見回していたキラは、ふとパソコンのスイッチが入りっぱなしになっていたことに気付いた。

「変だな、大尉パソコンなんてめったに使わないのに」

キラがこの部屋に来るようになってやっとその利用価値が出てきたといっても過言ではないフラガのパソコン。

本人パソコンなどを利用したデスクワークが何よりも苦手らしく、めったに触れたところを見たことがない。

あるといえば、報告書を作成するときぐらい。

最近ではそれも面倒、というか苦手でキラにさせたりもしているくらいだ。

不思議に思ったキラだが、特に気にした様子も無く電源を切ろうとする。

が・・・・

 

 

「・・・・・・た・・・・」

「え?」

ノイズが走ったかと思うと、その向こうには見たことも無い人たちがずらりと並んだ映像が表示された。

「・・・と・・・けた・・・」

「え・・え?」

一体誰かはわからないが、どうやらどこかと通信が繋がっているらしい。

だがよほど遠方なのか、映像にノイズは走るし音声もほとんど通じていない。

「えっと・・・」

どうしようかと、思い悩む。

とらわれの身である以上、勝手に通信機器を使用することはできない。

しかしここはフラガの部屋で、この部屋から通信が出ていてもだれもおかしいとは思わない・・・。

「大丈夫・・だよね」

そう思い直すと、キラはキーボードに指を走らせ、相手と一番いいアクセスポイントを探す。

「これでだめなら・・・こう・・・」

ぶつぶつとつぶやきながらの悪戦苦闘はものの数分で終わり、相手との会話がスムーズにできるようになる。

「これで、大丈夫ですか?」

そう問いかけるキラ。

だが、相手が発する言葉に、思わず絶句してしまった。

 

 

「やっと見つけた、我らが女神よ・・・」