「えっと、それでどうしてこんな話になったの?」

一緒に昼食をとるために席に着いたキラは、その場の雰囲気を変えるためにわざと聞く。

このまま、重たい雰囲気のまま食事をとってもおいしいわけがない。

「Gのプログラムの挑戦状のこと、キラ知っているよね」

「うん。まだ4人とも解けていないんでしょう?」

「そう。で、キラに少し見てもらえないかなぁと思って」

「それは別にかまわないけど・・・・、悔しくない?それ」

キラの言葉に、4人はぐっと詰まる。

悔しくないわけはない。奪ったものとはいえそれぞれのGは自分の機体なのだ。

それを人の手を借りて解決するなどとは、少々プライドにかかわる。

ましてや、まったく手も足もでない状態などとは決して認めたくない。

だが、すでにプログラムの解析を始めて3日たってしまっている。なのになにも進展がない。

プライドだのなんだの、言っていられなくなってしまったのだ。

「そういえば、質問は使ってみたの?」

「質問?」

「ほら、挑戦状が送られてきたとき、『一度だけなら質問に答えます』って書いてあったじゃない?あれは使ってみたの?」

「ああ・・・」

忘れていた、と4人は口をそろえていった。

自分で解析することに集中しすぎて、質問云々のことについて書いてあったのをすっかり忘れていた。

「一度、それを使ってみなよ。それで分からなかったら、ヒントを出してあげるから自力でといてみるって言うのは?」

「ヒントって、キラさん解けるんですか?」

「というか、もう解いた。ストライクにかかっていたやつはもう解いちゃったし」

「「「「え?」」」」

「知らなかった?ストライクのほうにも同じようなプログラムが流れていたの。だから僕がそれ直しておいた」

ストライクはG奪取のときに奪った最後のG。

ストライクを操れるだけの実力をもったパイロットがいないために、格納庫に保管してあるだけだったはずの機体。

「意外と原点をたどれば簡単なんだよ」

「原点、ですか?」

「そう。プログラムをよく見ていれば、どこをどうすればいいのかが、分かってくるはずだから」

と簡単そうに言うキラ。

それができれば苦労しないのだけれど。

「それじゃ、キラは『キヤト』の正体わかったの?」

「うん」

「教えてくれない?」

「だ〜め。だって、クルーゼ隊長に口止めされているもの」

「隊長に?」

「うん。これもいい経験になるだろうって。だから僕が解いてあげることはできないけど、ヒントだけなら」

とりあえず、ここで話していてもしかたないので食事を手っ取り早く終わらせ、5人は格納庫へと向かった。

 


「それじゃ、まずは俺が質問使ってみようか」

アスランはイージスのコックピットに座ると、イージスを覚醒させた。

その横からイザークたちが覗き込むようにして四方にいる。

「あ、でも質問ってどうやってするんだろう」

「画面に『キヤト』って入力してみて」

キラの言うとおり、アスランは『キヤト』の名を入力してみた。

すると、その名前に反応して勝手にプログラムが作動していく。

しばらくすると、画面に『キヤト』のものだろう言葉が示された。


『こんにちは。

 質問の提示ということは、まだ解けていないのだね。このプログラムが。

 質問の内容は、僕の正体とプログラムの解析方法、どちらの方かな?』


プログラムの解析、とアスランは打ち込む。

すぐに返信が来た。


『そう。プログラムの解析なんだね。

 原点をたどれば簡単に解けるものなんだよ。難しく考えすぎると、逆に解けなくなってしまうものだ。

 このプログラムを解く最大のヒントは、自分の機体をどれだけ知りうることができるか。

 Gはただの兵器かもしれないけれど、君の大切な相棒として考えてくれれば、自然の解けるプログラムだ。

 心がないからといって、邪険に扱って負担を掛けていてはいつかその反動が自分に帰ってくることになる。

 ヒントはこれだけだ。がんばって解いてね。

                                                              キヤト 』


それだけを表示すると、またしてもプログラムは何にも反応しなくなってしまった。

一連の動作を繰り返すが、やはり以前と同じで何の反応も示さない。

もう一度『キヤト』と入力しても、質問は一度だけという言葉どおりにもう作動することはなかった。

「これ、ヒントなのか?」

「まぁ、本人が言っているのだからそうなのではないですか?」

「だけど、これだけで解けといわれてもな」

ぶつぶつといっている3人をその場に置き、イザークは自分の機体の方へと移動した。

「イザーク?」

「こちらでも質問をしてみよう。まったく同じ答えが返ってくるのか、それとも別の答えが返ってくるのか」

イザークの試みによって、今度はデュエルで質問をしてみることになった。

しかし予想通りというかなんというか、デュエルの方でも返ってきたのはアスランのイージスに返ってきた答えとまった同じものだった。

「つまり、カンニングは無理、ということか」

「今度はブリッツでやってみましょう」

「ニコル、多分結果は同じだと思うが」

「いえ、僕が質問するのは、『キヤト』の正体のほうです」

その言葉にそれぞれが顔を見合わせると、すぐにブリッツの方に移動した。


『こんにちは。

 質問の提示ということは、まだ解けていないのだね。このプログラムが。

 質問の内容は、僕の正体と、プログラムの解析方法、どちらの方かな?』



あなたの正体と入力すると、これもまたすぐに答えが返ってきた。


『僕の正体か。

 鋭い人ならば、もう分かっていると思ったんだけどね。

 僕は君達のすぐ側にいる存在だよ。でも、君達にとっては近いけれど遠い存在なのではないかな。

 僕は決して君達と同じものにはなり得ない存在なのだから。

 それにもし僕の正体が分かったとしても、こんなことをした僕を君達は許しはしないだろうから。

 僕の正体が分かったら、ぜひ僕のところまで来て欲しい。

 どんな罰も、受けるつもりだよ 

                                                        キヤト 』


これだけ表示すると、先ほどと同じくまたプログラムからの反応がなくなった。

「僕達のすぐ近くって・・・・」

「よくわからないが、近いけれど遠い存在っていうのはなんなんだ?」

「結局解いて見なけりゃ何も分からないってことか」

「そういうことだな」

念のため、バスターでも『キヤト』の正体について質問したが、返答はニコルの時とまったく同じものであった。

分かっていたことだけれど、質問を全て使ってしまった以上これから先は自分達で解決していかなければならない。

「僕からもヒントだそうと思ったけど、なんか僕の出したかったヒント全部同じみたいだ」

「『キヤト』からのものと、ですか?」

「そう。実際に、これ以上のヒントは難しくて出せないんだよ」

「しかたがない。ならば自分達の能力しだい、ということだ」

かくして、4人はまたそれぞれの機体のコックピットに戻り、プログラムの解析を始めた。