「やっぱりだめだ」

シーツを被っていても雷が鳴れば聞こえるし、光れば分かる。

一人でいることにいい加減耐えられなくなってきた。

「・・・・ストライクの整備でもしてようかな。あそこ確か防音だし・・・、誰かいるよね」

そうつぶやくと被っていたシーツを脇に押しのけて、キラはそろそろと部屋を出た。

移動中に雷が鳴らないことを必死で祈りながら。




数分後ストライクなどのGが置いてある格納庫へ着いたキラだが、予想がはずれてそこには誰一人としていなかった。

いつもなら最低でも2,3人がGやジンの調整で残っているはずなのに。

「なんで誰もいないの・・・?」

いつもは作業の音や話し声で騒がしいこの場所も、今は物音ひとつ聞こえてこない。

作業の音を艦内に響かせないために防音になっているため、雷の音は聞こえてこないが、その分外がいきなり光るからそれはそれで結構怖い。

「う〜、どうしよ・・・・」

最初の目的どおりストライクの調整をしていようか。

といっても、別段ストライクに異常があるだけではなく、確認という作業しかないだろう。

それだとすぐに時間が余ってしまう。

だからといって、他のGはそれぞれのパイロットがロックをかけているはずだ。

キラにとって解除は別段難しいものではないのだが、勝手にするのは気が引ける。

「やっぱり、部屋にいるしかないのかな」

そう思って回りを見回した。

ふと、キラの視線は格納庫の休憩室へと止まった。

いつも電気が付いたままになっているその部屋が、今は真っ暗。

でも、なぜか人がいる気配はある。

「誰か、いるのかな」

一人でいるよりはいいだろうと、キラは休憩室へと向かった。

 


休憩室の中にいたのはなんとイザークだった。

彼は備え付けのソファに身を預けたままじっと窓の外を見ている。

声を掛けようとしたそのとき、またもや


ゴロゴロ ゴロゴロ

「ひゃっ!」

雷が大きく鳴り響き、キラは耳をふさいで座り込んでしまう。

この部屋、なんで防音ついてないのぉ。

涙目になっているキラに、いつのまにか近づいてきたイザークが声をかけた。

「何をしている?」

「ふぇ・・・・」

今にも泣きそうな顔を上げるキラに眉をひそめながら、目線を合わせるために自分もかがみこむ。

「何をしている?」

「雷・・・、怖・・・・」

「雷が怖い?」

イザークの言葉にコクコクとうなづく。

「とりあえずここにいてもしかたない。立て」

そういって自分は立ち上がるが、キラは一向に動こうとしない。

「キラ?」

「・・・・・・・・」

「なんだって?」

「・・・・・動けない」

どうやら先ほどの雷の時に腰を抜かしてしまったようだ。

恥ずかしいのか、キラの顔は耳まで真っ赤。

そんなキラに苦笑しながら、イザークはキラの体を横抱きにして抱え上げた。

「っわ!」

「じっとしていろ」

イザークは今まで自分が座っていたソファにキラを座らせると、その横に自分も腰を下ろした。

そうすると、また窓の外をじっとみつめる。

「・・・・何をみているの?」

「ん?」

「ずっと、そうやって見ているからさ」

「別に・・・。お前こそなんだってこんな時間にこんなところへ来たんだ?」

もうそろそろ消灯時間だろう?というイザーク。

「んっと、部屋に居たんだけどさ・・・・・」

雷が怖くて・・・、と恥ずかしそうにつぶやくキラ。

「雷が怖い、か」

「イザークは怖くないの?」

「怖くはない。・・・・・綺麗だとは思うがな」

「綺麗?」

雷が?

理解できないという顔のキラに、イザークはめずらしくも少し笑った。

「空に稲妻が走るだろう?プラントでは見ることができなかった現象だからな。真っ暗な空に稲妻が走るのはとても綺麗だぞ?」

「・・・そう、なの?僕はいつも音だけで怖くなっちゃうし。たまに光があっても暗かったところが急に明るくなるからビックリするだけ・・・かな」

「それならば、一度見てみるといい」

そういうと、また視線を窓の外へともどしてしまった。

あのイザークが綺麗だと言っているものをキラも見てみたくて、自分も視線を外へと向ける。

雷嫌いの自分が雷を待っているなんて、ちょっと妙な気分だ。

鳴るな鳴るなと思っているときはずっと鳴り続けるくせに、鳴ってくれと思うとなかなか鳴ってくれない。

と、そのとき


ピカッ


見つめていた空に、2本の稲妻が走った。

それは2匹の龍が空を泳いでいるかのように描かれていた。

たった一瞬のことだったのに、それはキラの目に異様なまでに焼きついた。

「どうだ?」

「うん・・・・、すごい・・・・」

呆然とつぶやくキラに満足そうにうなづくと、自分もまた窓の外に視線を戻した。

立て続けに数回、空に稲妻が走った。

途中、その雷の音が部屋の中に響いていたような気がしたが、何かに取り付かれたように雷を見つめるキラの耳には届いていなかった。












 



あれからどれくらいの時間がたっていたのだろうか。

いつのまにか雷はやみ、空を覆っていた雲が晴れちらちらと輝く星が夜空にあふれていた。

「今日はもう終わりだな」

「そうだね」

「どうだった?」

「綺麗だった。あんなにしっかり雷みたのなんて、初めてだったのかもしれない」

「そうか」

イザークは消したままだった部屋の電気をつけた。

いきなりの光にまぶしく、キラは目を細める。

「イザークはずっとここにいたの?」

「ああ。デュエルの整備が終わった頃に鳴り出したからな。それからずっとここにいた」

「そうなんだ」

「たまにはこういうのも悪くはないものだ」

「うん」

2人はそのまま休憩室を出ると自室に戻るために廊下を歩いた。

いつのまにか就寝時間を1時間もオーバーしていたため、人が起きている気配がない。

いつもならぐっすりと寝ているはずなのに、雷を始めて直視したせいか興奮していて眠気が襲ってこない。

このまま部屋に帰っても、しばらくは眠れないでいるのかもしれない。

「ねぇ、イザークは部屋に戻ったらすぐ寝るの?」

「いや、しばらくは起きている。なぜだ?」

「僕も眠くないからさ。イザークの部屋にお邪魔しちゃだめかな?」

イザークはしばらく考え込んでいたが、

「だめだ」

ときっぱり断った。

「え・・・、なん、で?」

ここまできっぱりと断られるとは思っていなかったキラは、立ち止まってイザークを見る。

もともと仲がよいというわけでもなかったが、こうまできっぱりと否定されるほど嫌われていたのか。

キラが何を考えているのかはすぐに分かったので、立ち止まっているキラの手を引き再び歩き出した。

「勘違いするな、別にお前を嫌っているとかではない」

「・・・・じゃ、なんで?」

「・・・・・我慢できるかどうか、わからないからな」

と、立ち止まったところはちょうどイザークの私室。

え?と顔を上げたキラにすばやく触れるだけのキスをした。

一瞬なにをされたか分からなかったが、少ししてから顔を真っ赤にして口元に手を当てた。

「な・・・、イ・・・・・、キっ・・・!」

よほど驚いたのか、キラの言いたいことはまったく言葉にはなっていない。

そんなキラの反応がおかしかったのか、イザークは今度はキラの頬にキスをした。

「日中ならばともかく、こんな夜中なんだ。何をするか分からん」

「それって、どういう意味?」

「分からないか?」

キラをそっと抱き寄せて、耳元につぶやく。

「・・・・・・・」

「それ、本当?」

「嘘を言ってどうする」

キラはおずおずと抱きしめられているイザークの背中に腕をまわした。

「僕・・・・、僕も好きだよ、イザークの、こと」

「え?」

少し体を離してキラの顔を覗き込むと、キラは顔を真っ赤にしてうつむいた。

「・・・・・本当か?」

「うん」

キラの返事を聞いたとたん、イザークはキラの腕を引いて自分の部屋へと入った。

「?イザー・・・・っ!」

部屋の扉が閉まったとたん、イザークはキラを強く抱きしめて、キスをした。

唇をなぞる感覚にぞくりとした感覚が走る。薄く開いた口の中にすかさずイザークが進入してきた。

おびえたように小さくなっているキラのそれにゆっくりと自分のものを絡める。

「ふっ・・・・・んん・・・・・っ」

「キラ・・・、キラ・・・・」

角度を変えるごとにイザークはキラの名前を呼ぶ。

「あっ・・・、イザ・・・・・」

「キラ・・・・」

唇を離したときにはすっかりキラの膝から力が抜け、イザークが体を支えなければ立っていられないほどだ。

そのままキラを抱え上げると、そっとベッドへと押し倒した。

「いいか、キラ。・・・・我慢できそうにない」

「うん・・・・、来て、イザーク」

イザークを引き寄せるように首に腕を回す。

そのまま、もう一度、2人は深いキスを交わした。

 

あとがき

わ〜い、イザキラだ〜。
と思うのは私だけ?
またキスまでしかいっとらんよ・・・。
先を書け、先を〜!!!