遠くで鳴っている雷に気づき、アスランはハロを作っている手を止めて顔を上げた。 そういえば、キラは昔から雷が嫌いだったなぁ。 婚約者にプレゼントするためにハロを作っていながら、そんなことを考えていた。 一人が怖いからといって、夜中に部屋に入り込んできて。 そんな日は怖くて眠れないからと一緒に眠って。 今ではもうそんなことはないだろうが、あれはあれで結構楽しかったのかもしれない。 何をそこまでおびえるのか、アスランにはさっぱりわからなかったが、本人が怖いといっているものを頭ごなしに否定してもしかたがない。 今頃キラは何をしているのだろうか。
こんな時間に、誰だ? 不思議に思いながらも、鍵を開けて扉も開ける。 すると、すぐに胸の中に何かが飛び込んできた。 「え?」 「アスラン〜っ」 腕の中に納まっているのは目に涙を浮かべているキラで。 昔とちっともかわっていないんだな。 アスランは苦笑すると、キラを抱きとめたまま扉を締めて鍵を掛けなおした。 「キラ、まだ雷怖いの?」 「・・・・・・怖い・・・・」 ギュッとしがみついてくるキラは、幼い頃とまるで変わっていなくて。 しばらくこんな風にキラを抱きしめたことなんてなかったな。 そう思うと、なぜか嬉しくなってくる。 今でも、キラは自分を頼ってきてくれているのだと、伝わってくる。
ゴロゴロ ゴロゴロ
「やだやだやだやだ〜っ」 アスランにしがみついている腕に力を込める。 「これは、近くに落ちたかな」 「う・・・・、うぇ〜〜」 ついには泣き出したキラを、アスランはあわてることなく頭や背中を撫でる。 「ほら、キラ。俺がいるだろう?大丈夫だよ」 「うぇっ・・・、ひっく・・・・」 「キ〜ラ、泣かないでよ、ね?大丈夫、すぐにどっかいっちゃうよ。何も怖くなんかないから」 大丈夫、とひたすらに言い続けて、キラを落ち着かせるために撫で続ける。
そんな子供みたいなキラに、アスランは改めて苦笑する。 昔と何も変わっていない、キラ。 でも、自分はかわってしまったのかもしれない。 戦争に出て、ナチュラルを殺している自分。 確かにキラも戦争にはでているけれど、まったく昔と変わっていないのに。 自分のこの手はもうどれだけの血で汚れてしまったのだろうか。 「大丈夫だよ・・・、アスラン」 「キラ?」 起きたのかと顔を覗き込んでみると、やっぱりキラは眠っているようだ。 寝言か? 「君は・・・きれいだよ・・・・、だから、大丈夫・・・・」 「キラ・・・・」 ただの寝言なのに。 アスランはその言葉に救われたような気がした。 キラをベッドに横にしようとして体を離そうとしたが、ギュッとしがみついている力が思った以上に強くて、その手をはずすことはできなかった。 そういえば、もう消灯時間か。 いつもよりは少し早いかもしれないけれど。 アスランはキラと一緒にベッドに横になると、改めてキラを抱きしめた。 「ん〜、アスラン・・・、好きだよ・・・・・」 そう寝言でつぶやくと、キラは猫のようにアスランに擦り寄ってくる。 アスランは少しだけ苦笑すると、キラの額に軽いキスを落とした。 「ありがとうキラ・・・・。お休み、よい夢を」 そうつぶやくと、アスランもまた、深い眠りに落ちていった。
あとがき 今回はアスラン語りにしてみました。 |