「うう〜、どうしよう・・・」

カレンダーとにらめっこしながら、キラは頭を抱えていた。
8月8日。
今日はイザークの誕生日。
ずっと前から、この日はお祝いをしようと決めていた。
でもイザークを驚かせたいから、彼には内緒。
朝出かけるときに今日は定時で帰ってこれるというのを確認してささやかなお祝いの料理の材料は調えた。

あと一つ。
絶対に必要なものを、キラは未だに用意できていなかった。
それは・・・



プレゼント。



せっかくの誕生日だから、気に入ってくれるものを上げたかった。
でもイザークの欲しいものがキラにはわからなくて、未だに悩み続けている。
本人に欲しいものがあるかと聞いても「キラが側にいること」としか言わないのでなにを用意していいのかさっぱりわからない。
・・・・側にいることを望んでくれるのは、すごく嬉しいのだけれど。

そのとき、一本の通信が入った。

「はい、キラです」
『こんにちは、キラ。準備の方はすすんでおりまして?』

今日イザークのお祝いをすることをラクスにだけは話していて、料理のあまり得意ではないキラにいろいろ教えてくれた。

「それが・・・」
『まぁ、何か問題がありまして?』

キラはまだプレゼントを用意できていないことをラクスに告げた。
すると、ラクスはそんなことかと、平然とした様子で言った。

『キラがイザーク様に持っていて欲しいものを選べばいいのですわ』
「僕が持っていてほしいもの?」
『ええ。イザーク様はキラが選んでくれただけで十分喜ばれるはずですわ』
「・・・それで、本当に喜んでくれるのかな?」
『もちろんですわv』
「なら、がんばって選んでみるよ」
『よろしければ、ご一緒させていただいてもよろしいですか?私の行きつけのお店なのですが、良い品がたくさんあるところですの』

















「いつもより少し早いか」

イザークは腕時計で時間を確認しながらつぶやいた。
なぜだか知らないが、今日は周りの連中が早く帰れとせかされた。
一体今日があるというんだ?

「ただいま」
「イザーク!?もう帰ってきたの?」

家につくとキラが慌てた様子で奥から出てきた。

「・・・他の奴らに追い立てられた。何かあったのか?」

イザークは改めてキラの姿を見た。
料理の最中だったのか、エプロンを身に着けている。
いつもより早い時間に帰ってきて、料理ができていなかったから慌てているのか?

「えっと、あの・・・」
「キラ?」

どうにも様子がおかしい。
イザークはキラの横を通ってキッチンへと行くと、いくつかの料理が出来上がっていた。
だがそれはすべてイザークの好きな物ばかりで。

「キラ、これは?」
「・・・お祝いの料理。ごめん、まだできてないの」
「お祝い?」
「今日、イザークの誕生日でしょ?」

誕生日?
俺の?

「・・・・・・・もしかして、忘れてた?」

図星らしいイザークに、キラは驚く。
まさか忘れていたとは思わなかったし、朝何も言わなかったのはただ単に照れくさかっただけだと思っていたから。
キラの誕生日はちゃんと覚えていてくれたのに。

「これ、全部キラが作ったのか?」
「うん。もう少しでできるから、リビングで休んでいて?」
「手伝おうか?」
「ううん、せっかくの誕生日だもん。僕が作りたいんだ」

だから手を出さないでくれというキラの頼みに、イザークはそのまま身を引いた。
せっかくキラがそこまでがんばってくれるのだから、自分は大人しく待つとしよう。























「ご馳走様」

イザークは出された料理すべてを食べ終えて手を合わせた。

「おいしかった?」
「ああ。腕が上がったな、キラ」
「ありがとう」

イザークの言葉にキラは嬉しそうに微笑む。
本当は少し作りすぎたから余るかと思っていたのだが、イザークがすべて綺麗に食べてくれた。
そのことが、キラは何よりも嬉しかった。
その後、二人で後片付けをしてリビングへと移動した。
イザークをソファに座らせ、キラはしまってあったプレゼントを取り出した。

「これは?」
「プレゼント。・・気に入ってくれると嬉しいんだけど」

渡されたのは綺麗にラッピングされた小さな小箱だった。

「開けてみても?」
「うん」

うなづくキラにイザークは丁寧にラッピングを開け、中の小箱を取り出して開いた。
中に入っていたのは、紫の石の付いたタイピンだった。

「これは、アメジストか?」
「うん。アメジストには悪い物事をからみを守る効果があるんだって」
「そうか」

イザークはタイピンを手に取るとそれを光に当てるかのようにかざす。
電気の光だけど、アメジストがきらきらと輝いて綺麗だ。
イザークはただ何も言わず、じっとそれを眺めている。

「・・・・気に入らない?」
「え?」
「あの、僕、イザークが何が欲しいのかわからなくて。ラクスに、それなら僕が上げたいものをあげればイザークが喜ぶって言ってて、それで・・・」
「キラの瞳だな」
「・・・え?」
「このアメジストが、キラの瞳の色と同じだと、そう思ったんだ」
「そ、そうかな?」
「ああ、同じ色だ。ありがとう、これから毎日つけるよ」
「ほんと?気に入ってくれた?」
「もちろんだ。・・・・まるで、キラがいつも側にいてくれるようだ」
「・・・っ」

それを見ながら何気なく言われたことに、キラは息を飲んだ。
本当のことを言えば、キラもそう思っていたから。
アメジストを選んだのは、それをイザークが身に着けていてくれれば、ずっと側にいられるような気がしたから。
仕事で忙しいイザークが、少しでも自分を想ってくれたらとの願いもこめて。
キラは嬉しくてどうしようもなく、隣に座っているイザークの首に腕を絡めてぎゅっと抱きついた。


この人が、今ここにいてくれて嬉しい。


「イザーク」
「ん?」
「誕生日、おめでとう。そして、生まれてきてくれて、ありがとう」


側にいてくれて、ありがとう。


「ありがとう」



イザークはぎゅっと、キラを抱きしめ続けた。










<あとがき>

イザーク誕生日おめでとう!
今年はイザークの誕生日にUPできましたv
なんせ、毎年書かなきゃと思いつつ通り過ぎてましたからねぇ・・・
今回はイザキラ同棲ネタ。
二人で暮らし始めてはじめての誕生日、キラにお祝いしてもらいましたv
何気にラクスも登場していますが。


まぁ、ものはさておき。
誕生日、おめでとうイザーク!