「「「こっくりさん?」」」

「はい!」

ある日のSEED学園生徒会室。

その日も責務に追われている中、書記であるニコルが突然言い出した。

 

 

こっくりさんをやろう。と。

 

 

「なんでこっくりさんなんだ?」

「突然何を言い出すかと思えば」

「あほらし」

ニコルの言い出した事に、まるで耳を貸そうとしない3人。

確かにここ数ヶ月「こっくりさん」がこの学園の中ではやっていることはアスランたちも知っていた。

だが、元より幽霊などというものを信じていないのでこのような占いじみたこともほとんど興味がなかった。

ある程度予測していたニコルも、この反応の薄さにはあきらめるほかないらしい。

「せっかくキラさんの気持ちを確かめるいい機会だと思ったのに・・・」

 

「「「なに!?」」」

 

キラの気持ちを確かめると聞いただけで、アスランたちはいっせいにニコルへと詰め寄った。

「キラの気持ちを確かめるとは、どういう意味だ!」

「どうやってそんなもので確かめるわけ?」

「こっくりさんで、本当にわかるのか!?」

一気に詰め寄られてちょっと引き気味になってしまったニコルだが、こほんと一つ咳払いをして「こっくりさん」計画をアスランたちに話し始めた。

 

ニコル自身、こっくりさんを本当に信じているわけではないらしい。

だが、こっくりさんをきっかけにキラの気持ちを聞きだすことが可能だということを思いついたのだ。

その内容を話せば、アスランたちもすぐに乗り気で合意を受けることができた。

あとの問題は、怖がりのキラにどうやってこっくりさんをさせるかということ。

 

 

 

 

「ただいま。ごめん、遅くなっちゃった」

「おかえりキラ」

それから30分後、キラは大慌てで生徒会室へと走りこんできた。

キラが先生に呼ばれて資料整理を手伝っていることは知っているのだから、別にこれほどあわてて戻ってくることもなかったのだが。

それでも、キラのそんな性格がかわいいと思ってしまう4人なのだった。

そうでなくてもこれ以上遅くなるようなら恐らくはイザークかアスランが進んでキラを迎えにいっていただろう。

キラはこの学園一の美少女と噂が高く、その人気は他校にまで及ぶという状態だ。

あの歌姫アイドル、ラクス・クラインと並べばそれこそこの世のものとも美しい絵が完成するとか。

「本当にごめん。僕に何かできることある?」

「今日の書類はそれほど難しい問題が上がって来ているわけではありません。もう終わりました」

「ホント?だったら僕本当に何もできなかったんだ。ごめんね?」

「気にするな」

そういってイザークが頭を撫でればうれしそうにはにかむ。

「そうだ。キラ、今日は帰り時間あるかい?」

「え?うん。家に連絡すればある程度は。何かあるの?」

「実は、今生徒の間ではやっている『こっくりさん』をこのメンバーでやってみようと思ってね」

「ええ!?」

こっくりさんが生徒の間ではやっているというのはキラも知っている。

キラ自身、クラスメイトのサイやフレイたちにやろうといわれたことも数回あるのだから。

だが、キラはそれを必ず断った。

放課後は生徒会の活動等もあるし、何よりキラは・・・・

 

 

怪奇関係が異常なほどに苦手なのだから。

 

 

「俺達も指して興味があるわけではないが、生徒達が先走った行動をして問題を起こしたとき生徒会が何も知りませんでしたではすまないだろう」

「知識として知っているだけでは、ちゃんとした対処はできませんからね」

「キラも暇なんだろ?だったら付き合えよ」

イザークたちから言われて、キラ自身逃げ場がない。

この中でキラの怪奇嫌いを知っているのはアスランただ一人のみ。

救いを求めるようにそちらを見たが、アスランはにっこりと微笑むだけでキラをかばってくれそうな様子はなかった。

「・・・・・分かった」

キラは不承不承、承諾するしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっと、用意するものは十円だまと鳥居・YESとNO・50音を書いてある紙。よし、これでOKですね」

キラ達は生徒会室の中心に机を一つだけ置くと、後のものをすべて部屋の隅へとおいやった。

そして、机を囲むようにそれぞれが立つと中心にその紙を置いた。

「では、いいですね。こっくりさんが帰ってくれるまで絶対にコインから指を離してはいけません。じゃないと、とりつかれてれてしまいますから」

「わかってる」

それぞれがうなづくが、キラだけはどこか不安そうな表情で机の上の紙とコインを見つめた。

どうしてみんなはこんなはこんな怖いことを平気でしようとするんだろう。

先ほどのニコルの「とりつかれる」という言葉を思い出しなおさら不安になる。

「では、いきます」

みんなが手を差し出したのであわててキラもコインに指を置いた。

そのコインに乗せた指の振るえに気づいたのか、イザークはコインにおいているのとは逆の手でキラの手を握った。

はっとしたように、キラはイザークを見る。

「大丈夫だ、俺達がいる」

「・・・・・うん」

「では、はじめましょう」

 

こっくりさん、こっくりさんとお決まりのせりふを唱えはじめる。

すると、誰も力を入れていないはずのコインがひとりでに動き始める。

「う、動いたっ」

「キラ、静かに」

とっさに声を上げてしまったキラに、アスランがそっとささやく。

全員の指を乗せたコインが無事「YES」のところにたどり着く。

質問スタートだ。

 

 

「えっと、ではまずは全員が知っているようなことを質問してみましょうか」

「そうだな。ではキラの役職は?」

「え?僕?」

またコインがひとりでに動き出す。

 

 

し・・・・よ・・・・・・き・・・・・・・・

 

 

 

「あたってますね。では、キラさんが好きな教科は?」

「ふえ?」

 

 

 

・・・・・ぷ・・・ろ・・・・ぐ・・・ら・・・・・む・・・・・・・・・・

 

 

 

「ほう、ではキラが嫌いな教科は?」

「え?」

 

 

 

 

・・・・・・こ・・・・ぶ・・・ん・・・・・

 

 

 

 

「あたってるじゃん。それじゃ、キラの嫌いな食べ物は?」

「なんで?」

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・ぴ・・・・・・ま・・・・・・・・・ん・・・・・・・・

 

 

 

 

「なんで全部僕に関することなの?」

素朴な疑問が、キラの中に湧き上がる。

一応生徒間ではやっているということでやっているのだが、彼らの表情は真剣そのもの。

ふざけてやってはいけないと最初にニコルに言われてはいたのだが、あのディアッカまでもが真剣そのものの表情で取り組んでいるのはどうにもおかしいような気がする。

質問に関することがすべて自分のことというのもおかしいような・・・・。

「そ、それはまぁ・・・俺達がよく知っていることを質問したらそうなっただけだよ」

「そうですよ」

「と、とにかく結構質問したし、次辺りがラスト質問だな」

「そう・・・なのかなぁ・・・・」

いまだに不思議そうな表情のキラはそのままに、イザークが最後の質問をした。

 

 

 

「最後の質問だ。キラが一番好意を持っているのはなんだ?」

「だからなんで僕・・・・」

 

 

 

こればかりは少し反応が違った。

先ほどまではあんなに簡単に動き出したのに、今回に限ってはなかなか動き出しそうにない。


質問の内容が分かりにくかったか?


4人の頭にそういう考えがよぎる。

だがストレートに「キラが好きな人は誰?」と聞くわけにもいかない。

とか考えている間に、コインが震えたように感じ、動き出した。

 

 

・・・・・あ・・・・・す・・・ら・・・・・・ん・・・

 

 

よし!


キラに分からないように、アスランがガッツポーズをとる。

だが、コインの動きはそのままではとまらなかった。

 

 

 

・・・・・い・・・ざ・・・・・く・・・・・・・・・・・で・・・・・・・・い・・・・・あ・・・・・つ・・・・か・・・・・・・・に・・・・・・・こ・・・・・る・・・・・・

 

 

なんと、ここにいる全員の名前をなぞったところでコインがとまった。

 

 

「・・・これは・・・・」

「最後の最後で、答えが違ったか?」

「別に違わないけど?」

キラの言葉に、みんなの視線がキラに集中する。

「僕、みんなのこと好きだし。ね?」

「ありがと・・・・」

としか、今はいえなかった。

 

とりあえずそれが最後の質問と言ってしまった以上、こっくりさんを終わらせるしかなくなってしまった。

最後に丁重にこっくりさんには帰ってもらい、コインが無事に鳥居へと戻る。

 

 

「終わった・・・・・」

キラがほっとしたように指を離す。

が、そのほかの4人はあまり納得いってはいない様子。

怖いことが終わったとばかり思っているキラは、そのことには気づかなかった。

「では、この紙とコインは僕が処分して置きますので。帰りましょうか」

「そうだね」

「ああ」

「しかたないわな」

 

結局キラが本当は誰が一番好きなのか、こっくりさんではわからなかった。

 

 

 

 

 

〜あとがき〜

紗夜さまからいただきましたリクエスト、「こっくりさん」。

いかがでしたでしょうか?

私自身、こっくりさんはしたことがないのでうまくできたかどうか非常に不安なところですが・・・・

怪奇関係、小説はすきなのですが、実際自分で体験するのは拒否するほどの怖がりなもので;

読むのは好きなんですけどねv

それでは紗夜さま、これからもよろしくお願いします