イザークに告白されて、2週間がたった。 あれから、一度も彼とは会っていない。 アスラン達はイザークとたまに会っているみたいだから、自分は彼に避けられているのかもしれない。 そして、自分でもイザークのことを避けているのかもしれない。
「面白かったね、今日の映画」 「うん。でも主人公がいまいちだったかなぁ」 今日はアスランと映画を見に行った。 普段一人でいるとイザークのことを考えてしまうから。こうしてアスランと出かけているときは、ほかの事を考えなくてすむ。 だって、自分はアスランの彼女なのだから。 他の男性の、イザークの事に頭がいっぱいになってしまってはいけない。 「あれ?あそこにいるの、イザークじゃない?」 アスランの言葉に、キラはビクッと体を振るわせる。 今は、会いたくない人なのに。 アスランの指す方向を、恐る恐る見ると、本当にそこにはイザークがいた。 だが、一人でいるわけではなかった。 イザークの隣には、とても綺麗な女の子が笑っていたからだ。 「へぇ、あいつ、彼女いたんだ」 アスランは思ったことを口に出しただけだったのだが・・・・。 その言葉は、キラの心に深く突き刺さった。 こちらに向かって歩いてきていたイザークとその子は、すぐに立ち止まっていたキラとアスランに気づいた。 「アスラン。・・・・・キラとデートか?」 「まぁね、イザークこそ、彼女いたんだ」 「ああ、この人は・・・・・」なんで、イザークはそんな女の子と一緒にいるの? 僕を好きだって言ってくれたこと、あれは嘘だったの?だから、他の女の子と平気な顔でデートなんかしているの? それとも、僕がイザークを振ったから? だから、イザークは他の子に乗り換えたの? そんなに、簡単な気持ちだったの? 知らず知らず、キラはうつむいてしまった。 アスランとイザークがなにやら話しているみたいだが、その言葉はキラの耳には届いていなかった。 そんなキラの様子にいち早く気づいたのは、イザークの横に立っていた女の子だった。 「あの・・・、どうかされましたか?気分でも・・・?」 肩に触れられた途端、キラは驚きや悲しみといういろいろな感情が混じって、つい乱暴にその腕を払ってしまった。 「きゃっ」 「ちょ、キラ、どうしたのさ」 はっとしたときには、3人の視線は自分へと向けられていた。 アスランは心配そうな目で。女の子は驚いているものの、やはり心配そうな目で。イザークは・・・
心なしか、悲しそうな目で・・・・。
「イ、イザークの馬鹿!嘘つき!大っ嫌い!」 どうしてそんな言葉が出たのか、分からなかった。 だけど、イザークの顔を見た瞬間、わけがわからずにそう叫んでしまっていた。 そして、キラは3人の顔を見ることなく、身を翻した。 「キ、キラ・・・!?」 アスランが呼び止めようとする声が聞こえた気がしたが、キラは無視してただ一目散に走っていた。
キラは家に戻ると、すぐに自分の部屋に戻って鍵をかけた。 寄りかかっていた壁から、ずるずると座り込む。 なんで、あんなこと言ったんだろう。 イザークのことを僕は振ったんだから、イザークが誰と付き合っていようと僕に何も言う権利はないはずなのに。 でも、なぜかあの子の隣で、嘘みたいに微笑んでいるイザークを見るのはが、とても胸が苦しかった。 どうして・・・。 僕は、アスランが好き、なんだよね。 なのに、なんでイザークのことでこんなに頭がぐちゃぐちゃになって胸が苦しくならなきゃいけないの? 「キラ、いるよね。鍵開けてくれる?」 扉越しに聞こえてきたアスランの声に、キラはビクリと体を震わせる。 そうだ、アスランとのデートの途中で帰ってきちゃったんだ。 アスランに、なんていえばいいの・・・。 こんなぐちゃぐちゃな気持ち、アスランになんていっていいか分からない。 「キラ。開けてくれないなら、自分で開けるよ?」 「ま、待って。今、開けるから」 キラが鍵を開けると、すぐにアスランが部屋の中に入ってきて。 なぜか、すぐに扉を閉めた。 「ご、ごめんねアスラン。今日は・・・・」 「ねぇキラ。キラは、僕のことどう思っているの?」 「え・・・・?」 「キラは、本当に僕のこと、好きなのかな」 「なに・・・言ってるの?」 「キラはさ、本当はイザークのことが好きなんじゃないの?」 イザークのことが好きなんじゃないの? アスランの言葉が、何度も何度も頭の中で繰り返される。 そう告げるアスランの顔は、どこか悲しげに微笑んでいた。 キラは数歩後ろに下がると、ペタンとその場に座り込んでしまった。 自分の気持ちがわからないのに、アスランにそれを尋ねられて。 でも、そく「違う」と答えることもできなかった。 それが、答えなのかもしれない。 「キラと僕ってさ、付き合っているけど、キラは本当に僕のことが好きで付き合ってくれていたのかな」 「そ、そんなの当たり前じゃない!僕は、アスランのことが・・・!」 「うん、キラが僕のことを好きでいてくれているのは分かってる。でも、それは本当に恋愛の好き?イザークに対する好きと、僕に対する好き。一緒なのかな」 イザークに対する好きと、アスランに対する好き? アスランは側にいるとホッとして、アスランのことを考えると胸が温かくなる。 イザークは側にいるとドキドキして、イザークのことを考えると自分の気持ちを抑えることができなくなる。 「・・・・違う」 どうして、今まできづかなかったのだろう。 こんなにも、二人に対する気持ちは違うのに。
そして、どうしてか分からないけど、気づいてしまったのかもしれない。 アスランと、イザークの違いを。 「僕、僕は・・・イザークのこと・・・が・・・・」 「うん」 「・・・・・・・好き・・・・なのかも知れない」 「なのかも知れない、じゃなくて、好き、なんでしょ?」 「・・・・・うん・・・・・」 「自分の気持ち、分かった?」 アスランが優しく言うと、キラは何どもコクコクうなづく。 涙が、なぜか止まらなかった。 アスランを裏切ってしまうから?それともイザークに対する自分の気持ちが大きすぎるから? 「そんなに、泣かなくてもいいよ。キラの気持ちは分かったから、僕は身を引くよ」 アスランの言葉に、キラははっと顔を上げる。 「イザークもキラが好きなんだから、僕が間にいるとうまくいかなくなるだろう?」 「でも・・・、イザークはあの子がいるし・・・・」 「そのことは、本人に聞くんだね」 そういうと、アスランは立ち上がって部屋の扉を開ける。 そこには、イザークが立っていた。 アスランは入れ替わりに、部屋から出ようとする。 「あとは、二人でゆっくり話しあうんだね。僕は帰るから」 「アスラン、お前は本当にこれでいいのか?」 「僕は、キラが幸せであればそれでいいよ。それじゃね」 アスランが立ち去ってしまうと、キラとイザークの間には気まずい空気が流れる。 二人とも、なんて相手に話しかけていいのか分からない。 キラは、自分の気持ちに戸惑いを持って。 イザークは、キラの気持ちを聞けたことに嬉しくもどうしていいのかわからなくて。 「キラ・・・。さっきのは本当、なのか?」 「・・・・・・・」 コクリとただうなづく。 イザークはキラにそっと近づくと、その体をゆっくりと抱きしめた。 「イザーク?」 「本当に、本当だな。信じていいんだな」 「・・・・うん、信じて。僕はイザークのことが好き」 キラはイザークの背中に腕を回し、ただただイザークの体温を感じていた。
〜あとがき〜 なんか中途半端に終わっていますが、これに「本当の気持ち」完結です。 あ、存在忘れられていますが、あのときイザークの隣にいた女の子はイザークの従姉妹です。 御影さま、お気に召しましたでしょうか?遅くなってもうしわけありませんでした。 |