ピピピピピピ・・・・・・・ピピピピピピ・・・・・・・



なり続ける目覚ましに深い眠りから意識を浮上させたシンは、まだ眠いために開ききっていない瞼をそのままに音源へと腕を伸ばす。

が、いつもそこにあるはずのアラームはなく、代わりに何かがシンの腕に触れた。

それはそのままシンの腕を掴むと、静かにもとの布団の中へと腕を戻してくれる。

動いたために少し肌寒く感じると、すぐ側に暖かいものがあることに気付いてそれにぎゅっと抱きついた。

その包み込まれるような温かさに、シンはほっとしたかのように息を吐き出した。




くすくす




そのまま再び深い眠りにおちようとするシンの耳に、知っているような知らないような笑い声が聞こえた。

不思議に思い、ふと顔を上げると・・・。


「あ、起きた?」

優しい笑みを浮かべたアスランの顔がそこにあった。

「・・・・・・。・・・・・アスラン、さ・・・?」

「おはよ、シン」

ちゅっと額に口付けられて、シンの顔は真っ赤に染まってしまう。

ようやくはっきりと目が覚めて自分の状態を見てみれば、シンはアスランに抱きしめられたまま眠っていた。

そして、なぜかシンは自分が何一つ身に纏っていないことに気付いた。

だが、それはアスランも同じで・・・。




「///////」




・・・・・思い出した。




昨日、シンは抱かれたのだ、このアスランに。

たくさんキスをして、知らないうちにベッドに押し倒されていて。

やさしくするから、いい?と問われて、シンは何も分からないままただうなづくことしかできなかった。

初めてのことばかりで、怖くて、痛くて、どうしようもなかったけれど。

それでも、それを察するかのようにぎゅっと抱きしめてくれるアスランの腕にとても安心できたことをよく覚えている。

胸元には、昨日の行為を証明するかのような赤い斑点がいくつも浮き出していた。

「体は大丈夫か?」

「え?」

「昨日、無理させたからな。初めてだったんだろ?」

「・・・・・はい」

頬を真っ赤に染めるシンがとてもかわいくて。

アスランはその唇に触れるだけのキスを送った。

それだけでもよほど恥ずかしいのか、シンはアスランにぎゅっと抱きつくとその胸に顔をうずめて隠してしまう。

子供が甘えるようなそのしぐさに、アスランの頬も緩む。

「そろそろおきようか。時間だ」

「はい」

アスランに抱き起こされてベッドの上に上半身を起こしたシンは不意に離れてしまったぬくもりがとてもさびしく思えた。

昨日あれだけ触れ合ったというのに、まだ何かが足りない。





いつだって触れていたい。





「こら、何ぼんやりしてるんだ?」

「アスラン、さん・・・・」

シンがアスランを見ている間に手早く着替えを済ませてしまったアスランがシンの服を持ってベッドに近づいた。

差し出される服に手をかけようともせず、シンはアスランにぎゅっと抱きつく。

「シン?」

どうした?と尋ねてもシンは首を横に振るだけ。

そんなシンの姿に苦笑をもらすと、アスランはシンの体を少々力を込めて話した。

「シン、いつまでもそんな格好だと、風邪をひくよ」

「あ・・・、・・・・・・・ごめんなさい・・・・」

アスランの怒ったような表情にシンは拒絶されたと思いこみうつむいてしまう。

だがそんなシンの考えを否定するかのように髪を梳くと、そのままてきぱきとシンに服を着せていった。

おそらく、まだ体が十分に動かないだろうから。

「そういえば、まだ言ってなかったよな」

「え?」

赤服の上着をシンの肩に羽織らせてから、アスランは言った。

「好きだよ」

そういってにっこりと微笑むアスランがシンの目の前にいた。

「・・・・・・え・・・・・・?」

「好きだよ。シンのことが、誰よりも好きだ」

シンは信じられない、という顔で目を見開いた。

「シン?」





「・・・・・・・・嘘・・・・・・・・・」

「え?」

「嘘だ、そんなの」





シンは顔をそむけたかと思うと、ぎゅっと自分の胸元を握り閉めた。

「シン?」

明らかに困惑した声のアスランだったが、シンは決してアスランの顔を見ようとはしなかった。






シンには、信じることができなかった。

だって、アスランにはすでに守る人がいる。

その相手は、シンがこの世界中で一番嫌いな人物で。

アスランにキスされたときも、抱かれたときも、そのことはわずかに頭によぎった。

気になってしかたがないと言っても、アスランにはシンに対する特別な感情はないのだと自分に言い聞かせた。

アスランには、他に好きな人が、大切な人が居るんだと。




それでもいいと思った。

アスランが今、この瞬間シンの側に居て、必要としてくれるのならば、それでいいと。




なのに、どうしてそんなことをいうの・・・?

どうして、嘘だと分かっている言葉に、こんなに心がざわめくんだろう。

「信じて・・・シン。俺は、お前のことが・・・」

「だから、嘘は聞きたくないって!」

「嘘なんかじゃない。俺は、シンがすきなんだよ?」

絶対に認めない!という態度を崩さないシンに、アスランは冷静に語りかけた。

自分はシンが好きなのだと。

誰よりも、好きなのだと。



「だって!」



反論しようとばっと顔を上げたシンの目には、たくさんの涙が溜まっていた。

「あなたには、あいつがいるじゃないか!いつも、あなたのそばに居て、当然のように守られて・・・、あなたが守っているあいつが!」

「・・・・・・」

「なのに、どうしてそんな嘘が信じられる!?どうしてそんな嘘・・・・っ」

「シン」

静か過ぎるほど冷静な声が聞こえた。

驚いたように顔を上げたシンは何も考える暇もなくアスランに言葉を奪われた。

「・・・・ん・・・・・っ、・・・・ふぁ・・・・・・」

まるですべての言葉と思考を奪い取るかのように、アスランは深いキスをシンに送った。

最初は拒むように暴れていたシンも、ゆっくりと力を抜きそのキスに答える。








どのくらいそうしていただろうか。

慣れない長いキスに、すっかりシンの息は上がっていた。

「カガリと俺は、なんの関係もないよ?」

「・・・・う、うそだっ」

「本当。確かに、カガリは俺の守るべき人物だ。俺はあいつのボディーガードだし、あいつのことを必要としている人は、たくさんいる」

「オーブの、元首だから・・・?」




だから、あなたはあいつを守るの?




「それもあるね。でも、俺は頼まれたんだ」

「だれ・・・に?」

「俺の親友のキラ。カガリの弟なんだ。キラは今、彼女を守れないから。だから、俺に頼むって」

「・・・・・・・」

「だけど、これだけはいえる。俺とカガリは特別な関係はない。誓ってもいい」

「本当に?」

「ああ。・・・信じて、シン。・・・・愛してる」

「・・・・はい」

「愛してるよ・・・」

抱きしめられて、耳元にささやかれる。

甘く、しびれるようなその言葉に、シンは力を抜いてアスランの胸の鼓動を聞いた。

言葉を返さないシンに、アスランは何度もささやいた。





愛してる・・・好きだ・・・・愛してる・・・・・。





なんどもそうささやいて、顔中に優しいキスを落とした。







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