アスラン・ザラ





あの日以来、彼にはあっていなかった。





ミネルバが地球に降下してから2日間が経過した。

それでもまだ空気中の粉塵濃度は濃く、周りとの連絡は皆無な状態にあった。

こんなときでも、シン達パイロットには訓練規定というものがある。

こんな非常事態までやらなくていいと思う兵士も居るようだが、こんなときだからこそ訓練は必要なことだということがシン達、赤を纏うものならば誰もが痛感していた。






今日も訓練規定に基づき、シンはルナマリア・レイと共に訓練室へと移動していた。








「でも、さすがはあのアスラン・ザラよね!」





アスラン、という名前に敏感に反応してしまう。

あまり考え無いようにしているというのに、気がついたらアスランのことを考えている。アスランの姿を探している自分に気付くのだ。






会いたくないのに。

会いたい、なんて・・・。




「シンだってあんな完璧な成績だしたことないわよね?さすがはあの噂だけのことはあるわ!」



感激したようにアスランを褒め称えるルナマリア。

だがシン同様レイもそれに答えるつもりは無いらしく、黙って目的地を目指して歩いている。

シンも何も返事をしないのだが、それには別に気にするつもりもないらしく、ルナマリアは一人で昨日見たアスランの射撃の腕を褒め称えていた。


確かに、あれはすごかった。

彼の放つ1弾1弾、すべて相手の急所へと命中している。

あんなの、教官の模範でもみたことなんて無かった。


















「あら?」


訓練室に行くと、そこには先客がいた。

一人は先に行くと言っていたメイリン。そして・・・





アスラン・ザラ。





その人だった。

思わず入り口のところで固まってしまう。

その原因は二人の位置だった。


銃を構えていたメイリン。

そして、その後ろから抱き込むように両腕を支えている、アスランの姿だった。





「うん、大分よくなった。あとは練習を繰り返せばいい」

「ありがとうございました」


ペコリ、と頭をさげる姿は愛らしく、アスランもにっこりと微笑むとメイリンの頭を撫でていた。


「やぁ、やっと来たね」

「こんにちは。どうしたんですか?一体。メイリンも」

「艦長から、暇なら君たちの訓練を見てやってほしいと頼まれてね」

「そうなんですか。それじゃ、次私いいですか?」

「ああ」


まるで興味津々の子供のような顔をしてアスランの前に立つルナマリア。


アスランはルナマリアに数弾撃たせたあと、一言二言アドバイスをして。

そして、先程メイリンにしていたのと同じような体制をとる。







「シン?」





徐々にあとずさるシンに気付いたのか、レイが声を掛ける。

が、その言葉はシンの耳には届いていなかった。








みたくない・・・、こんなの・・・。

みたくないっ








「ご、ごめん。俺、ちょっとヨウランたちの所言ってくる!」




そう言って、シンはその場を逃げ出すように出て行った。





そんなシンの背中を見つめる、アスランの視線に気付くこと無く。













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