あれから一月の時が流れ、シンたちは無事にアカデミーを卒業し、ザフトに入隊した。

所属は今期から新たに結成されるグラディス隊に、艦はミネルバに所属となった。




「あ、いたいた。シン、レイ!」

艦内での荷物の整理をようやく終えた頃、ルナマリアがシン達の下へとよってきた。

「どうしたんだ?そんなに慌てて」

「別に。ただお昼まだなら一緒にどうかと思って」

「俺たちも今から行くところだ」

進水式すら終えていない艦内はいまだ慌しく、多くの兵士達が出入りを繰り返している。

パイロットであるシン達がやるべきことはある程度終わっていたが、整備士であるディーノやヨウランたちはまだまだ忙しそうだ。

「それにしても、いいわよねシンは。内密とはいえ、最新鋭の機体を任せられるんだから」

いいわねぇ・・・。とぶつぶつ零すルナマリアを横目に、シンは自分の手を見た。



シンはアカデミー時代の好成績からザフトで内密に開発されていたMS、インパルスガンダムのパイロットに選ばれた。

正直、自分がそんなものに選ばれるとは思っていなかったから純粋に嬉しかった。








これで、守る力が手に入った・・・と。





「あれ?ちょっと、あれって・・・」

「え?」

ルナマリアの声に顔を上げれば、目の前からはちょうど艦長ともう一人、シンのよく知る人物が歩いてきた。

「あ・・・」

「ヤマト教官だわ。どうしてここに・・・?」

艦長と一緒にいたのは、間違いなくキラだった。

シンは驚きに声もでてこない。

そのうち、二人もシンたちに気付いた。

「こんにちは」

にっこり笑うキラに、シンたちは慌てて敬礼をした。

「「お久しぶりです、ヤマト教官」」

「うん、久しぶり。元気だった?」

「はい。ですが、教官はどうしてこちらへ?」

「急な決定だったけど、今日からこちらに配属になりました。キラ・ヤマトです」

そういって微笑むキラに、シンは驚きを隠せなかった。

「グラディス艦長、少し、シンと話をさせていただいてよろしいですか?」

「ええ。かまわないわよ。それじゃ、レイとルナマリアはこちらへいらっしゃい」

「あ、はい」

「わかりました」

艦長がレイとルナマリアを連れてその場を離れた。

驚きのあまり固まっているシンだけを残して歩き出すが、ルナマリアはシンをこっそり振り返りため息をついた。

「大丈夫かしら、シン」

「大丈夫だろう」

「ヤマト教官のことだけじゃないわ。インパルスのこともよ」

「あれを手に入れたのはシンの実力だ。シンならばあの機体をあやつることができるだろう」

「そうかしら。まだまだあぶなかったしいと思うけど」

「もし倒れそうなら、俺たちが支えればいい」

「そうね。確かにそうだわ」

ルナとレイがそんな話をしていたというのは、シンには内緒。










「ここじゃなんだし、僕の部屋、行こうか」

「・・・・うん」

その場で何も話すこともなく、シンはキラについて上官の私室がある場所へと向かった。

キラとシンは何も話すことなくキラの部屋へと向かった。

部屋に入るとキラは迷うことなくシンの胸に飛び込んだ。

「キラ?」

「・・・・・やっぱ、シンの側って落ち着くね」

シンに抱きつきながらキラはふ〜、とため息をついた。

いきなり言い出したキラに、驚いていたシンは苦笑をもらし背中に手を回す。

「久しぶりだ。元気だった?」

「うん。シンは?」

「絶好調」

二人は顔を見合わせてどちらともなく微笑んだ。

その後二人はベッドに座って話をした。

「でも驚いた。キラがミネルバに配属になるんて」

「ん〜、正確には配属ってわけじゃないんだけどね」

「どういう意味?」

「これこれ」

きらが差すのは襟元。

そこにはザフトの中でもごく一部の人間しかつけることができない証があった。

「それって、もしかしてフェイスの!?」

「うん。アカデミーの研修が終わった後、僕とアスランはフェイスの称号をもらったんだ。だからさっそくそれを使ってこのミネルバに乗せてもらったんだ」

「それって、簡単にできるんだ?」

「もちろん、簡単じゃないよ。でも僕はもともと所属が確定してなかったから、君たちパイロットの戦闘指揮を執ることになったんだ」

「そっか」

「シンだってすごいじゃない。インパルスのパイロットに選ばれたんでしょ?」

まぁね、これで・・・」








「キラを守ることができる」







「シン・・・」

驚くキラに、シンは言った。

「ずっと力がほしかった、大切な人を守る力が・・。それはザフトに入ってからずっとだったけど、キラに出会えて、その想いは強くなった。キラを守りたい、守れるだけの力がほしかった。それが、今手に入った」

シンはぐっと手を握る。

そんなシンに、キラはそっと手を握った。

「僕はシンにだけ守ってほしいわけじゃない」

「キラ?」

「シンが僕を守ってくれるなら、僕がシンを守るよ」

「え?」

そんなことを言ってくれるとは思わなくて、シンは思わず聞き返してしまった。

キラはそんなシンの手をとって自分の頬に当てた。

「シンの言葉、すごく嬉しい。でも、僕はもう自分のために誰かが傷つくなんて嫌なんだ」

「キラ」

キラはそっと目を瞑った。

「だから、シンが僕を守ってくれるなら、僕がシンを守るよ。この強すぎる力、あんまり好きじゃないけど、でもこの力がシンを守れるなら・・・」

それも、怖くない。









「それじゃ、俺たちはずっと一緒にいなきゃな」




互いが、互いを守れるように。

泣きたいときに、側に居てあげられるように。




「うん」








〜 あとがき 〜

なんとなしに始まったこのシリーズもようやく終わりました!
これの当初の目的は・・・まぁそんなにたいしたものじゃないけど、とにかくシンの悲しみをキラが癒して、そしてキラの苦しみをシンが受け止める、みたいなものを書きたかったのですよ。
お互いがお互いを支え、守りあうことって素敵ですよね。

読んでいただいてありがとうございました。
感想・拍手お待ちしております。