「あのときから・・僕はふっとしたときに今日みたいな発作を起こすようになったんだ。発作が起きると、まるで自分の周りの人すべてが僕を攻めているように感じて・・・。アスランたちですら、怖くてしかたなくなる」 彼らがもう一度キラの敵になることなど、ないはずなのに。 そこまで離すと、キラはシンに気付かれないようにそっと息を吐いた。
自分のことはすべて話した・・・。 それをどう思ってくれるのかは、シン次第・・・。
「キラ」
え・・・?
キラは自分を呼ぶ声に伏せていた顔を上げてシンを見ると、シンはキラを見て悲しげな表情を浮かべていた。 「シン?」 「ごめんな・・・・」 「え?」 どうして、シンが謝るの? 「おれ、何も知らなかった。なのに、自分のことだけ考えてキラを責めた。ほんとに、ごめん」 子供な俺で、ごめん・・・。 そういうと、シンは一筋の涙を零した。 「シン、泣かないで・・・」 キラはシンの涙を拭うようにして頬に手を伸ばす。 キラが頬に触れたことでようやく自分が泣いていることに気付いたのか、自分の目元に手をやったが、ふと目の前にあるキラの表情をみて苦笑を漏らす。 「キラこそ・・・」 「え?」 キラも、シンの涙につられるように涙を流していた。 シンは自分の頬に添えられたキラの手を取ると、両手でぎゅっとにぎりしめ、そのまま祈るように自分の額に添えた。 「こんなに小さいのに」 「シン?」 「こんなに小さい手で、キラはたくさんのものを守ってきたんだな。たった一人で戦っていた」 いくらコーディネーターの成長が早いとはいえ、戦争に巻き込まれた時のキラは自分と同じ年齢だったはず・・。 それなのに、どんなにつらくても逃げ出さずに友達を守るために戦った。 戦争を終わらせようと、悲しみの連鎖を断ち切ろうとした、この小さな手。 「僕は、一人じゃ無かったよ」 キラの言葉に、シンはそっと顔を上げた。 「僕の周りにはたくさんの人がいたよ」 「でも戦って傷ついたのは、キラだけだ。周りにたくさんの人がいたかもしれないけど、その人たちは誰も無力で・・」 シンは手を下ろすと、キラをすっと見つめた。 「誰も、キラを守ってはくれなかったんじゃないか」 「・・・・・・・・」 反論はできなかった。 みんながキラの力を必要としていた。だから、キラも戦った。
そして、誰よりも、傷ついてしまった。 それはキラ自身でさえ気付かないほどに深く、深く・・・。
「もう、いいよ」 シンはキラの体をそっと抱き寄せた。 「もう無理しなくてもいい。一人でがんばって、一人で守らなくてもいいんだ・・・」 「シン・・・」 キラは抱き寄せられまま、抵抗しようとはしなかった。 いや、抵抗できなかったのだ。 シンの腕の中は暖かくて・・・。 まるで・・・・・・・・。 「キラは俺が守る」 「まも・・・る?」 「そう。キラは俺が守る。もう、誰にも傷つけさせたりなんて、しない。だから・・・」
だからもう、一人でがんばらないで。 すべての人を守るために、心を閉ざさないで
「俺が、絶対に守るから」 キラのことを、守るから・・・・。 「うん」 キラはシンの背に手を回すと、ゆっくりと目を閉じた。
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